共通点と違い

フィナステリドとデュタステリドは、どちらも男性の男性型脱毛症の薬として国内で承認されている処方薬です。添付文書を並べると、効能の書き方、用量、使えない人、薬の取扱いの注意が異なります。効果を確かめるには通常6か月が必要とされている点と、適応が男性に限られ、20歳未満での安全性と有効性が確立されていない点は共通です。日本皮膚科学会のガイドラインは、男性型脱毛症に対して、どちらの内服も推奨度Aとしています。

どちらも男性の男性型脱毛症の薬

この記事で読んだのは、フィナステリドは「プロペシア錠」、デュタステリドは「ザガーロカプセル」の添付文書です。以下では、それぞれ「フィナステリドの添付文書」「デュタステリドの添付文書」と書きます。添付文書によると、販売が始まったのは、フィナステリドが2005年12月、デュタステリドが2016年6月です。どちらも、医師の処方箋が必要な処方箋医薬品です。同じ成分のほかの製品の添付文書は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトで確かめられます。

添付文書に書かれている薬効の分類は、フィナステリドが「5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬」、デュタステリドが「5α還元酵素1型/2型阻害薬」です。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、どちらも、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素の阻害剤と説明しています。フィナステリドはⅡ型の酵素、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方が対象です。

どちらの添付文書にも、「男性における男性型脱毛症のみの適応である。他の脱毛症に対する適応はない」「20歳未満での安全性及び有効性は確立されていない」と書かれています。

添付文書の記載を並べる

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項目 フィナステリド デュタステリド
効能又は効果 男性における男性型脱毛症の進行遅延 男性における男性型脱毛症
用法及び用量 男性成人に、通常0.2mgを1日1回。必要に応じて増量できるが、1日1mgが上限 男性成人に、通常0.1mgを1日1回。必要に応じて0.5mgを1日1回
効果を確かめるまで 3か月の連日投与で効果が現れる場合もあるが、効果が確認できるまで通常6か月の連日投与が必要 投与開始後12週間で改善が認められる場合もあるが、治療効果を評価するには通常6か月間の治療が必要
6か月以上使っても変化がないとき 進行遅延がみられない場合は投薬を中止する 改善がみられない場合は投薬を中止する
使えない人(禁忌) 成分に過敏症の既往歴のある人。妊婦、妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性 成分やほかの5α還元酵素阻害薬に過敏症の既往歴のある人。女性。小児等。重度の肝機能障害のある人
女性、子ども 女性に対する適応はない。小児等に対する適応はない 女性と小児等には投与しない
肝機能障害のある人 主に肝臓で代謝される薬で、肝機能障害のある患者を対象にした臨床試験は行われていない 重度の肝機能障害のある人には投与しない。それ以外の肝機能障害のある人での薬物動態は検討されていない
併用に注意する薬 併用注意の項目はない。薬物動態の項に、調べた薬との相互作用は認められなかったとの記載がある CYP3A4阻害作用のある薬(リトナビルなど)。併用すると血中濃度が上がる可能性がある
薬の取扱い 分割したり粉砕したりしない。粉砕、破損した錠剤を、妊婦、妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は取り扱わない 薬が皮膚から吸収されるため、女性や小児はカプセルから漏れた薬に触れない。触れた場合は、直ちに石けんと水で洗う
重大な副作用 肝機能障害(頻度不明) 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)

どちらの添付文書も、6か月以上使う場合は、定期的に効果を確認し、続ける必要があるかを検討することとしています。フィナステリドの添付文書には、効果を持続させるためには継続的に服用すること、増量による効果の増強は確認されていないことも書かれています。

副作用の記載

重大な副作用のほかに、添付文書には「その他の副作用」の表があります。頻度ごとの記載は、次のとおりです。

フィナステリド

1〜5%未満 リビドー減退
1%未満 勃起機能不全、射精障害、精液量減少
頻度不明 そう痒症、じん麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む)、睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)、AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい

デュタステリド

1%以上 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)
1%未満 発疹、頭痛、抑うつ気分、乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)、腹部不快感
頻度不明 蕁麻疹、アレルギー反応、瘙痒症、限局性浮腫、血管性浮腫、浮動性めまい、味覚異常、精巣痛、精巣腫脹、脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症、腹痛、下痢、倦怠感、血中CK増加

性機能に関する副作用については、どちらの添付文書にも、服用をやめた後も続いたとの報告があると書かれています。精液の質の低下については、服用をやめた後に正常化または改善したとの報告があることも、フィナステリドの添付文書に書かれています。

フィナステリドの添付文書は、「重要な基本的注意」で、薬との因果関係は明らかではないとしたうえで、自殺念慮、自殺企図、自殺既遂が報告されていることも記載しています。患者の状態を十分に観察するとともに、自殺念慮や自殺企図があらわれた場合は服用を中止して速やかに医師などに連絡するよう、患者に指導することとされています。

2つの添付文書は、頻度の区切り方が同じではなく、載っている臨床試験の対象と期間も異なります。数字の大小だけで比べず、気になる症状があるときは医師や薬剤師に相談してください。

検査を受けるときと、家族がいるときの注意

どちらの添付文書にも、前立腺がんの検査で測るPSA(前立腺特異抗原)の値に薬が影響することが書かれています。フィナステリドの添付文書によると、国内の24歳から50歳の男性型脱毛症患者では、PSAの濃度が約40%低下しました。前立腺がんの診断の目的でPSAを測る場合は、2倍した値を目安として評価することとされています。

デュタステリドの添付文書は、前立腺肥大症の患者に1日0.5mgを投与した場合、6か月後にPSAの値が約50%減少するとしています。男性型脱毛症の患者でも、臨床試験の結果から値が減少すると推測されるとし、6か月以上服用している人の値を評価するときは、測定値を2倍した値を目安に基準値と比べることとしています。PSAの検査を受けるときは、薬を服用していることを、検査をする医師に伝えてください。

女性や子どもが薬に触れないための注意は、上の表のとおり、薬によって異なります。添付文書は、その理由として、男子胎児の生殖器の発育に影響するおそれを挙げています。フィナステリドの添付文書には、錠剤はコーティングされていて、割れたり砕けたりしない限り、通常の取扱いで有効成分に触れることはないと書かれています。デュタステリドは、カプセルから漏れた薬に触れないことが求められています。女性(妊娠中の人、妊娠の可能性のある人、授乳中の人を含みます)や子どもと同居している場合は、保管の場所を決めて、診察のときに取扱いを確かめてください。

添付文書には、このほか、精液への影響、男性の乳がんや前立腺がんに関する報告、薬が体に残る期間などの記載があります。全文は、PMDAのウェブサイトで読めます。

ガイドラインは効果の差をどう見ているか

ガイドラインは、男性型脱毛症に対して、フィナステリドの内服もデュタステリドの内服も「行うよう強く勧める」(推奨度A)としています。女性型脱毛症に対しては、どちらも「行うべきではない」(推奨度D)です。

2つの薬の効果の差について、ガイドラインは、デュタステリド1日0.5mgとフィナステリド1日1mgを6か月間比べた国際臨床試験を紹介しています。全毛髪数と毛の直径の増加では、デュタステリドのほうが優れた効果を示しました。一方で、直径60μm以上の硬毛の数では、両者に有意な差がありませんでした。写真による評価は、治験担当者の採点では両者に有意な差がなく、専門家3人の採点ではデュタステリドのほうが優れていたものの、点数の差はわずかだったとされています。同じ箇所は、両者の効果の差については今後さらなる検討を要すると結んでいます。

副作用について、同じ解説は、国内の52週間の試験で性機能に関する副作用が比較的高率だったことを挙げています。そのうえで、投与にあたっては、性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要としています。

どちらの薬を使うかは、持病、ほかに使っている薬、検査の予定などを医師に伝えたうえで、説明を受けて決めてください。

添付文書が当てはまるのは承認された製品

この記事で読んだ添付文書は、国内で承認された製品のものです。海外製の未承認の薬は、成分の量や添加剤が国内の承認薬と同じとは限らず、国内の添付文書の内容がそのまま当てはまるとは限りません。オンライン診療で薬の提案を受けたら、次の点を確かめてください。

  • 処方される薬の製品名と、有効成分の量
  • 国内で承認された製品かどうか
  • 効果を確かめる時期と、続けるかどうかを見直す時期
  • PSAの検査や健康診断を受ける予定があるときの扱い
  • 女性や子どもと同居している場合の保管と取扱い

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参考にした一次情報

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