契約の形で、見る決まりが変わる

国民生活センターは、通信販売にはクーリング・オフ制度がないと説明しています。返品は、特約があればその内容に、特約がなければ商品を受け取った日を含めて8日以内の返品(費用は消費者の負担)の決まりによるとしています。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える「いわゆる美容医療」は、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフと中途解約の対象です。ただし、美容を目的とし、主務省令で定める方法によるものに限られます。国民生活センターの令和元年(2019年)の資料の脚注が挙げる5つに、AGAの治療や発毛を促す治療は挙がっていません。消費者庁は、キャンセル料のうち平均的な損害額を超える部分の条項は無効になると説明しています。自分の契約にどの決まりが当たるかは、消費者ホットライン「188」で確かめてください。

契約の形ごとに、見る決まりが違う

AGA治療の契約には、オンラインで処方された薬を定期的に受け取る形、来院して回数やコースを前払いする形、分割払いやローンを組む形などがあります。公的機関などの資料は、それぞれに別の決まりを説明しています。

通信販売で商品を買う クーリング・オフ制度はなく、返品は特約か、特約がないときの決まりによる(国民生活センター)
美容医療のコース契約 美容を目的とし、主務省令で定める方法によるもので、期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるものは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」として、クーリング・オフと中途解約の決まりがある(消費者庁)
事業者との契約全般 消費者契約法が、不当な勧誘による契約の取消しと、不当な契約条項の無効を定めている(消費者庁)
分割払いのクレジット クレジット契約で購入した商品や役務に問題があるとき、クレジット代金の支払の停止を申し出られる場合がある(日本クレジット協会)

この記事は、各機関が説明している内容を紹介するもので、個別の契約への当てはめは行いません。

オンラインで薬を定期的に受け取る契約

国民生活センターは、通信販売にはクーリング・オフ制度がないと説明しています。返品の可否や条件についての特約がある場合は、特約に従います。特約がない場合は、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品でき、返品の費用は消費者の負担になるとしています。

診療を受けて処方された薬の購入がこの決まりに当たるかどうかは、この記事で参照した資料には書かれていません。申込みの最終画面に表示すべき項目は、記事「定期購入の最終確認画面で見るべき6つの項目」にあります。AGA治療のオンライン診療で、長期間分の薬を申し込んだ後にキャンセルできなかった事例は、記事「AGA治療のオンライン診療で目立つ「処方薬の定期購入」のトラブル」にまとめています。

来院して回数やコースを前払いする契約

特定継続的役務提供の対象

消費者庁の特定商取引法ガイドは、「特定継続的役務提供」を、長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引としています。指定されている7つの役務の1つが「いわゆる美容医療」で、期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象です。

同じガイドは、対象を、美容を目的とするもので、主務省令で定める方法によるものに限るとしています。国民生活センターが令和元年(2019年)11月21日に公表した資料の脚注は、いわゆる美容医療を、次の5つについて主務省令に規定する方法によるものとしています。

  • 脱毛
  • にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去、または皮膚の活性化
  • 皮膚のしわ、たるみの症状の軽減
  • 脂肪の減少
  • 歯牙の漂白

2019年時点のこの一覧に、AGAの治療や発毛を促す治療は挙がっていません。同じ資料は、男性の美容医療サービスの相談例に薄毛治療を含めています。個別の契約が対象になるかは、この記事では判断しません。

対象になる場合のクーリング・オフ

特定商取引法ガイドは、特定継続的役務提供の契約では、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録でクーリング・オフ(契約の解除)ができるとしています。国民生活センターのクーリング・オフのページは、起算日を申込書面か契約書面の早いほうを受け取った日とし、美容医療の資料は、契約書面を受け取った日を1日目としています。

ガイドは、クーリング・オフをした場合の扱いも説明しています。役務がすでに提供されていても、消費者は対価を支払う必要がなく、損害賠償や違約金も支払う必要がないとしています。頭金などを払っていれば、速やかに返してもらえるとしています。事業者が事実と違うことを告げたり威迫したりして、消費者が誤認・困惑したためにクーリング・オフをしなかった場合は、期間を過ぎてもできるとしています。

ガイドは、本体の契約をクーリング・オフした場合は、購入する必要がある関連商品もクーリング・オフできるとしています。美容医療の関連商品として、いわゆる健康食品、化粧品、美容を目的とする医薬品や医薬部外品などが指定されています。ただし、健康食品や化粧品などの消耗品を使ってしまった場合は、この規定が適用されないとしています。通知の方法について国民生活センターは、はがきの場合は、特定記録郵便や簡易書留など発信の記録が残る方法で送るよう案内しています。送付の記録や関係書類は、少なくとも5年間保管するよう案内しています。

対象になる場合の中途解約

ガイドは、クーリング・オフの期間が過ぎても、消費者は将来に向かって契約を解除(中途解約)できるとしています。事業者が請求できる損害賠償などの額には、上限があると説明しています。美容医療の上限は、次のとおりです。

役務の提供を始める前 2万円
役務の提供を始めた後 提供された役務の対価に相当する額と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計

「契約残額」は、役務の対価の総額から、すでに提供された役務の対価に相当する額を引いた額です。たとえば、対象になる契約で役務の提供を始めた後に、契約残額が10万円だった場合、その20%は2万円で、5万円より低いため、上限に加わるのは2万円です。これは、ガイドの算式にこのサイトが数字を当てはめた計算の例です。

ガイドは、事業者が契約の前に渡す「概要書面」と、契約の後に渡す「契約書面」に、クーリング・オフ、中途解約、割賦販売法に基づく抗弁権の接続、前受金の保全などを書くことを定めていると説明しています。対象になる契約では、これらの欄が解約の条件を確かめる場所になります。

消費者契約法が定めていること

消費者庁は、消費者契約法を、消費者と事業者の間にある情報の質・量や交渉力の格差を踏まえて、消費者の利益を守るための法律と説明しています。同庁のリーフレット(令和8年(2026年)6月)は、消費者(事業として、または事業のために契約する場合を除く個人)が事業者と結ぶ契約であれば、あらゆる契約が対象としています。

契約を取り消せる場合

リーフレットは、不当な勧誘で結ばされた契約を後から取り消せるとして、次のような行為を挙げています。それぞれに条件があります。

  • 重要事項について、事実と異なることを告げること(不実告知)
  • 利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益となる事実を、故意または重大な過失で告げないこと(不利益事実の不告知)
  • 将来における変動が不確実な事項について、確実であると告げること(断定的判断の提供)
  • 帰ってほしい旨を伝えたのに、事業者が帰らないこと(不退去)
  • 帰りたい旨を伝えたのに、事業者が帰らせないこと(退去妨害)

このほかにも、不安をあおる告知などが挙げられています。取消権の行使期間は、短期が追認できる時から1年間、長期が契約の締結から5年間と示されています(霊感商法等は別の期間)。

キャンセル料の条項が無効になる場合

リーフレットは、キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分の条項は無効になると説明しています。さらに、解約したらキャンセル料を支払うという条項だけでなく、解約のときに支払済みの金銭を返さない場合なども問題になるとしています。このサイトからの提案として、解約料の額に疑問があるときは、算出の根拠を事業者に尋ね、相談窓口に相談してください。

分割払いのクレジットを使う場合

国民生活センターの令和5年(2023年)8月30日の資料は、美容医療サービスについて、分割払いは月々の支払が少額でも、分割手数料を含めた総額が高額になる場合があるとしています。そのうえで、手数料を負担してまで必要な施術かを落ち着いて考えるよう助言しています。クレジット契約を結ぶときは、年収額などを正しく申告すること、断るときは「契約しない」とはっきり伝えることも助言しています。この資料の「美容医療サービス」は、専ら美容の向上を目的として行われる医療サービスを指します。

一般社団法人日本クレジット協会は、クレジット会社などの業界団体です。同協会の案内は、購入した商品や役務に、次のような問題があるときは、クレジット代金の支払を停止できる場合があると説明しています。

  • 商品の引渡しや役務の提供をしてくれないこと
  • 役務の提供内容に問題があること
  • 見本やカタログと、現物や役務の内容が違うこと
  • そのほか、契約内容に問題があること

同じ案内は、次のいずれかに当たるときは、支払の停止ができないとしています。

  • クレジット契約が、割賦販売法の適用を受けないとき
  • 商品の購入が、営業のため、または営業としてのものであるとき
  • 現金販売価格に分割払い手数料を加えた総額が4万円未満のとき(リボルビング払いは現金販売価格が3万8千円未満のとき)
  • 支払の停止が、信義に反するとき

申し出の手順は、先に販売事業者や役務提供事業者に連絡して解決を図り、連絡が取れないとき、または解決しないときに、契約したクレジット会社に申し出る、というものです。同協会に申し出ても、手続きは受け付けられないとしています。

クーリング・オフについて、国民生活センターは、クレジット契約をしている場合は、販売会社とクレジット会社に同時に通知するよう案内しています。このサイトからの提案として、分割払いでは、クレジット会社の名称と連絡先を契約のときに控えてください。

その場で決めずに、条件を確かめる

国民生活センターの令和5年(2023年)の資料は、美容医療サービスについて、美容目的の施術は多くの場合、緊急性がないとしています。「今やった方がいい」などと勧められても、その場で契約や施術をせず、いったん帰宅して周囲に相談するなど、慎重に検討するよう助言しています。これらは美容医療サービスについての助言です。同じ資料の相談事例には、AGA治療のクリニックでの契約も載っています。

2023年の資料は、美容医療サービス等の自由診療では、医師が施術費用と解約条件などを丁寧に説明することが求められているとして、厚生労働省の平成25年(2013年)9月27日付けの通知を挙げています。2019年の資料は、薄毛治療の相談事例の1つとして、解約を申し出たところ、サプリメントなどの代金60万円と施術1回分の15万円の計75万円の支払いを求められ、納得できないという内容を載せています。この事例では、解約のときに、施術の代金に加えて、サプリメントなどの代金も求められています。

医療機関が解約と精算の条件を概要書面や公式サイトなどで事前に示していれば、次の項目は、申込みの前に確かめられます。示されていない項目は、契約の前に医療機関へ尋ねてください。

契約の前後の書面で読む項目

以下は、ここまでの資料を踏まえた、このサイトからの提案です。

解約の方法と期限 申出先と手段(電話、フォーム、書面)、受付の時間帯、次回の決済日や発送日の何日前までか
書面の受取り日 クーリング・オフの対象になりうる契約では、8日の起算日になる。申込書面と契約書面を、いつ受け取ったかの記録
前払い分の精算 解約したときに、提供済みの診療や薬を何の単価で差し引くか。残りの返金の方法
解約料の計算方法 金額か算式が書かれているか。解約の時期で変わるか。算出の根拠を尋ねられるか
未使用分と未発送分の扱い 使っていない薬や、まだ発送されていない分を、解約できるか。発送後の返品の可否と、返送の費用の負担
関連商品の扱い サプリメントや外用剤などを併せて契約するか。解約のときに返品や返金ができるか
返金の時期と方法 解約の申出から何日以内に、どの方法で返金されるか
クレジットの扱い クレジット会社の名称と連絡先、分割手数料を含めた総額、解約のときにクレジット会社へ連絡する必要があるか
診察が続く頻度 契約期間のなかで、医師の診察が何回あるか。薬を続けるかどうかを、誰がいつ判断するか

書面や画面の説明があいまいなときは、申し込む前に、記録が残る方法(メールやフォーム)で質問してください。服用をやめたときの薬の扱いは、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」にあります。

困ったときの相談先

国民生活センターは、美容医療サービスの資料で、不安に思ったときやトラブルになったときは、早めに最寄りの消費生活センター等に相談するよう呼びかけています。窓口は、消費者ホットライン「188」で案内されます。

同じ資料は、消費生活相談の救済の対象を、原則として契約トラブルなどの経済的な実被害としています。医療の質のみに関する問い合わせや、精神的な損害を求める慰謝料の請求は、専門家や弁護士へ相談するよう案内しています。医療の内容への疑問と契約の相談の窓口の違いは、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」にあります。

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