費用は項目に分け、6か月から12か月の合計で見る

厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」は、自由診療の内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るとしています。医療機関のウェブサイトで、広告できる事項の制限を外す(限定解除)場合の要件として、自由診療の通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を載せるよう求めています。プロペシア錠の添付文書は、効果が確認できるまで通常6ヵ月の連日投与が必要としています。ザガーロカプセルの添付文書も、治療効果の評価には通常6ヵ月間の治療が必要としています。このサイトは、1か月あたりの金額だけでなく、6か月から12か月の合計で費用を見ることを提案します。診察、薬、検査、配送、決済などの項目ごとに「1回あたり」と「1年の回数」を書き出し、掛け合わせて合計します。

自由診療の費用は、医療機関ごとに決まる

厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(令和8年(2026年)3月30日最終改正。この記事では「広告のガイドライン」と書きます)は、自由診療について、保険診療として実施されるものとは異なり、その内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るとしています。そのため、このサイトは、他の人の支払額や見かけた金額を、そのまま自分の費用とみなさないことを勧めます。このサイトは、特定の金額を相場として示しません。代わりにこの記事では、自分で調べた金額から1年分の合計を出す手順を示します。自由診療と保険診療の違いは、記事「自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと」で説明しています。

費用を分ける項目

AGA治療の費用は、1つの金額ではなく、いくつかの項目の合計です。名称や含まれる範囲は医療機関によって違うので、次の項目に分けて書き出してください。固定ページ「費用を見るときのチェックポイント」の6分類を、金額の出し方に合わせて細かくし、消費税の行を加えたものです。

初診の費用 診察料のほか、オンライン診療ではシステム利用料や診察前の相談の料金がかかるか。診察だけで終えたときの扱いはどうか。
再診の費用 診察はどのくらいの間隔で行われ、1回ごとにいくらかかるか。診察のない配送の月があるか。
薬代 薬の成分名、1日の量、1回の処方が何日分か。1日あたりでなく、1回の支払額がいくらか。
検査の費用 血液検査などの検査があるか。どの条件で必要になり、いつ、いくらかかるか。
配送料 毎回かかるか。まとめて受け取ると変わるか。再配送の費用は誰が負担するか。
決済の費用 支払方法ごとの手数料があるか。分割払いにすると総額が変わるか。
消費税 表示された金額が税込か、税が別に加わるか。診察や薬が課税か非課税か。
解約時の扱い 途中でやめたときの精算、返金、すでに発送した分の扱いはどうか。

広告のガイドラインは、費用の支払方法として、クレジットカードなど現金以外の支払いの可否や分割払いの可否を、医療機関が広告できる事項に挙げています。費用の内訳の明細を示すことも差し支えないとしています。サイトで見当たらない項目は、予約の前に医療機関へ尋ねる手がかりになります。

表示について、公的な資料が定めていること

自由診療の費用は、標準的な額と期間、回数で示す

広告のガイドラインは、医療機関のサイトで広告できる事項の制限を外す(限定解除)要件の1つとして、自由診療に係る通常必要とされる治療内容、費用などの情報を提供することを挙げています。治療の名称や最低限の治療内容と費用だけを紹介して患者を誤認させ、不当に誘引すべきではないとしています。この要件は、医療機関が実施している治療を紹介するとき、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を載せることを求めるものです。

標準的な費用が明確でない場合は、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなどして、可能な限り分かりやすく示すこととされています。同じ要件では、掲載場所について、リンクを張った先のページに載せたり、利点や長所の情報に比べて極端に小さな文字で載せたりしないこととされています。

治療期間と回数、追加費用を含む範囲が分かりやすく載っている料金表は、1年分の合計を出すときの材料として使えます。載っていない項目は、尋ねてください。

費用を強調した広告は、ガイドラインが慎むべきとしている

同じガイドラインは、費用を強調した広告を、医療広告として適切ではなく慎むべき「品位を損ねる内容の広告」の1つに挙げています。例は「今なら○円でキャンペーン実施中!」や「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」などです。このサイトからの注意として、大きく目立つ金額が、治療に必要な費用の全体を表しているとは限りません。目立つ金額の横にある条件を読み、次の節の表に移して合計を出してください。「月額○円から」の読み方は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」にあります。

消費税の表示と、非課税の取引

国税庁のタックスアンサーNo.6902は、総額表示義務を、事業者が消費者にあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるものと説明しています。同じ資料は、価格を表示していない場合まで税込価格の表示を義務付けるものではなく、口頭で伝えるような価格は総額表示義務の対象にならないとしています。診察の場で金額を口頭で告げられたときは、サイトの画面や書面で、同じ金額と税込かどうかを確かめてください。

国税庁のタックスアンサーNo.6201は、主な非課税取引の1つとして、健康保険法などによる医療など「社会保険医療の給付等」を挙げています。ただし、美容整形や差額ベッドの料金、市販されている医薬品を購入した場合は、非課税取引に当たらないとしています。この資料には、AGAの自由診療について個別の記載は見当たりません(2026年11月時点)。診察料や薬代が課税か非課税かは、この資料からは分からないため、医療機関に「表示の金額は税込ですか」と尋ねてください。

6か月から12か月の合計を見る理由

プロペシア錠(フィナステリド)の添付文書(令和5年(2023年)8月改訂(第4版))は、「7. 用法及び用量に関連する注意」で、3ヵ月の連日投与により効果が発現する場合もあるとしています。そのうえで、効果が確認できるまで通常6ヵ月の連日投与が必要だとしています。

同じ項目には、6ヵ月以上投与しても男性型脱毛症の「進行遅延」がみられない場合は投薬を中止することも書かれています。6ヵ月以上投与する場合も、定期的に効果を確認し、継続投与の必要性を検討するとされています。

ザガーロカプセル(デュタステリド)の添付文書(令和7年(2025年)8月改訂(第2版))の7は、投与開始後12週間で改善が認められる場合もあるとしています。治療効果を評価するには、通常6ヵ月間の治療が必要だとしています。6ヵ月以上投与しても男性型脱毛症の「改善」がみられない場合は投薬を中止すること、定期的に効果を確認して継続投与の必要性を検討することも、同じ項目に書かれています。

プロペシア錠の効能又は効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」、ザガーロカプセルは「男性における男性型脱毛症」です。どちらも、女性に対する適応はないとされています。どちらも、薬を続けるかどうかを、定期的な確認のうえで検討するものとしている点は共通です。費用の面では、6か月分以上の合計を見込んでおくと、判断しやすくなります。12か月という期間は、添付文書が定めたものではなく、このサイトが比べやすいように置いた期間です。

1年分の合計の出し方

手順

  1. 医療機関のサイトの料金表と、申込み画面や規約から、次の表の項目ごとに「1回あたり」の金額を書き写す
  2. 診察や配送が1年に何回あるかを、処方の日数と診察の間隔から数える
  3. 「1回あたり」に「1年の回数」を掛けて、項目ごとの合計を出す
  4. 項目ごとの合計を足し、条件を満たす割引があれば引く

薬代の「1年の回数」は、1回の処方が何日分かで決まります。1年を365日とすると、30日分なら約12回、90日分なら約4回です。端数の日数の扱いは、医療機関に尋ねてください。

書き込み用の表

表の記号は、自分で調べた金額や回数に置き換えてください。空欄は、サイトで見当たらず、医療機関に尋ねる項目です。

項目 1回あたり 1年の回数 1年の合計
初診の費用 A1 B1 A1×B1
再診の費用 A2 B2 A2×B2
薬代 A3 B3 A3×B3
検査の費用 A4 B4 A4×B4
配送料 A5 B5 A5×B5
決済の費用 A6 B6 A6×B6
条件を満たす割引(引く金額) A7 B7 A7×B7
1年の総額 (A1×B1)から(A6×B6)までの合計から、A7×B7を引いた額。税抜で表示された項目には、消費税を加える

6か月分の合計を出すときは、同じ表の「1年の回数」を6か月分の回数に置き換えてください。

2年目に変わること

2年目の費用がどうなるかについて、この記事で参照した資料には、金額や条件を定めた記載が含まれていません。分かっているのは、次の2点です。

  • プロペシア錠の添付文書は、効果を持続させるためには継続的に服用することと書いています
  • 両方の添付文書は、6ヵ月以上投与する場合も、定期的に効果を確認し、継続投与の必要性を検討することとしています

薬を続けるかどうかは、診察で医師と決めることになります。続ける場合の費用は、医療機関の料金表で確かめるほかありません。次の点は、事実ではなく、申込みの前に尋ねる質問として使ってください。

  • 初診にだけかかる費用は、2年目にはなくなるか
  • 初回だけの割引や、期間を区切った割引は、いつ終わり、終わった後はいくらになるか
  • 2年目の診察は、1年目と同じ間隔と料金か
  • 薬代の1回あたりの金額や、1回の処方の日数は変わるか
  • 1年分を1回の支払いにした場合、続けるかどうかを決める機会があるか

国民生活センターが2026年6月23日に公表した資料には、AGA治療のオンライン診療の相談事例(2025年6月受付)が載っています。40歳代の男性が、1年分の治療薬を画面上で選び、代金約7万円をクレジットカードで支払ったという内容です。

この男性は途中で服用をやめましたが、1年後に医師の問診がないまま1年分の治療薬が届いたとされています。サイトには定期購入の記載があったものの、わかりづらかったと述べています。これは1件の相談事例で、金額は相場や平均ではありません。この事例では、クリニックが「1年ごとの定期購入」と説明しており、こうした更新の仕組みがあると、2年目の費用に影響します。更新の有無と、更新の前に連絡があるかを、質問に加えてください。事例の詳細は、記事「AGA治療のオンライン診療で目立つ「処方薬の定期購入」のトラブル」にあります。

医療費控除に当たるかどうか

支払った費用が医療費控除の対象になるかどうかは、費用の合計とは別に確かめる点です。国税庁の資料の読み方は、記事「AGA治療の費用は医療費控除の対象になるのか」で説明しています。

申込みの前に尋ねること

以下は、広告のガイドライン、国税庁の資料、国民生活センターの資料、添付文書を踏まえた、このサイトからの提案です。尋ねる相手は、医療機関の問い合わせ先です。

  • 初診から1年間に、診察、薬、検査、配送、決済の費用が何回ずつかかるかを聞いた
  • 表示された金額が税込か、別に消費税が加わるかを確かめた
  • 口頭で聞いた金額を、サイトの画面や書面でも確認した
  • 薬の成分名、1日の量、1回の処方の日数を、料金表と照らして確認した
  • 追加費用が発生する条件と、その金額の範囲を確認した
  • 割引の条件と、終わった後の金額を確認した
  • 薬を続けるかどうかを、いつ誰が判断するのかを確認した
  • 1年分の契約と更新の条件、途中でやめたときの精算を確認した

申込みを確定する直前の画面で見る項目は、記事「定期購入の最終確認画面で見るべき6つの項目」にまとめています。契約や支払いで困ったときは、国民生活センターが案内している消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。

次に読む

参考にした一次情報

内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。