厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は、医療従事者は原則として、診療中の患者に次の事項などを丁寧に説明しなければならないとしています。現在の症状と診断病名、予後、治療の方針、処方する薬剤の名称・服用方法・効能・特に注意を要する副作用、代わりの治療法がある場合の内容と利害得失(費用が大きく異なれば費用も)です。日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版)は、男性型脱毛症の診断を、問診で家族歴や脱毛の経過を聴き、視診で確かめるものとしています。同省の通知は、美容医療について、患者の個別の状況に応じて治療方法を選んで提案する行為は医行為にあたり、無資格者が業として行えば医師法第17条に違反するとしています。国民生活センターは、オンライン診療を受けるときの注意として、契約内容と解約条件、とくに長期間の処方を事前によく確認するよう助言しています。
初回カウンセリングで会う人と、それぞれの役割
医療機関によっては、スタッフとの相談と医師の診察が別になっている場合があります。厚生労働省は、通知「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年(2025年)8月15日)で、次の事例が報告されているとしています。美容医療を提供する病院等で、無資格者が「カウンセラー」等と称して、医療行為や診療に関連するカウンセリングを行う事例です。この通知が扱うのは、自由診療で行われる美容医療です。本文に「AGA」の語は見当たりません(2026年11月時点)。ただ、診断や治療の方針を誰が決めるのかについての考え方は、AGAの受診でも手がかりになります。
同省は通知で、診察で得た患者の情報から治療方針などを主体的に判断して伝える行為は診断であり、医行為にあたるとしています。無資格者が業として行えば、医師法第17条に違反するとも述べています。違法な例として挙げているのは、患者の主訴や希望する処置を聞いたうえで、具体的な治療方法を選んで提案し、または決めるなど、個別の状況に応じた医学的な判断を伝える行為です。形式的には料金設定の説明の形をとっていても、実質的に個別の状況に応じた医学的判断を伝えているなら、医行為にあたるとしています。看護師等が、医学的判断を伴う行為である診察を行うことも、医師法などに違反する例として挙げています。
受診するときは、薬の種類や量を自分の状態に合わせて決める話が、医師の診察の前に進んでいないかに気をつけてください。次の2点を、最初に尋ねてください。
- 医師の診察は、いつ、どれくらいの時間で行われるか
- 治療の内容は、診察のあとに医師が決めるのか
同じ通知は、医師は医師法第20条に基づき、無診察で治療等を行うことを禁止されているとしています。ここでいう「診察」は、問診、視診、触診、聴診その他の手段を問わず、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものとしています。必要な医学的情報の収集や画像・動画による補完をせず、メールやチャットのみで診断や処方をすることは、医師法第20条違反となるおそれのある行為としています。オンライン診療の初診のルールは、記事「初診からオンライン診療を受けるときのルール」にあります。
診療中の説明として指針が挙げる項目
医療法第1条の4第2項は、医師などの医療の担い手が、医療を提供するにあたり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めています。厚生労働省は「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年(2003年)9月12日医政発第0912001号)で、診療中に説明する項目を具体的に挙げています。指針は、診療情報の提供を、口頭による説明、説明文書の交付、診療記録の開示などの方法で行うものとしています。医療従事者は、患者が理解しやすいように、懇切丁寧に提供するよう努めなければならないとも書かれています。
同じ指針は、診療中の患者に対して、原則として次の事項などを丁寧に説明しなければならないとしています。AGAの受診に置き換えると、次の質問になります。
| 現在の症状及び診断病名 | AGAと診断されるのか。ほかの原因を調べる必要はあるか |
|---|---|
| 予後 | 治療を続けた場合と、続けなかった場合に、どのような経過が見込まれるか |
| 処置及び治療の方針 | どの治療から始め、どれくらいの期間で見直すのか。診察は何回、どの間隔で受けるのか |
| 処方する薬剤の名称、服用方法、効能、特に注意を要する副作用 | 成分名は何か。1日の量と飲み方はどうか。国内で承認された薬か。注意が必要な副作用と、出たときの連絡先はどこか |
| 代替的治療法がある場合の内容と利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合は、それぞれの費用を含む) | ほかの選択肢には何があり、それぞれの長所、短所、費用はどう違うか |
| 手術や侵襲的な検査を行う場合の概要、危険性、実施しない場合の危険性、合併症の有無 | 植毛術などの手術や、侵襲的な検査を受けるときの概要、危険性、合併症の有無は何か |
| 治療目的以外に、臨床試験や研究などの目的も有する場合の、その旨と目的の内容 | この治療は、診療のほかに臨床試験や研究の目的を含むか |
表の左の列は、指針の文言を要約したものです。指針は、説明の方法として口頭のほかに文書の交付も挙げています。説明の内容を文書やデータで受け取れるかも、尋ねてください。指針は、診療記録の開示についても、患者が求めた場合には原則として応じなければならないとしています。
診断のために伝えること
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、男性型脱毛症の診断を、次のように説明しています。問診で家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診で額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認します。拡大鏡やダーモスコピーの使用も、診断の手助けになるとしています。同じガイドラインは、男性型脱毛症の診断は比較的容易としたうえで、ゆっくりと頭髪が抜けて頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型を除外することが大切だとしています。女性型脱毛症では、次のような脱毛を除外することが大切だとしています。
- 慢性休止期脱毛
- 膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
- 貧血、急激なダイエット、その他の消耗性疾患などに伴う脱毛
- 治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛
ガイドラインが問診で聴くとする家族歴や脱毛の経過を踏まえ、次の点をメモにまとめて持っていってください。
- 気づいた時期と、薄くなっている部位
- 抜け毛が増えた時期と、最近の変化
- 血縁の家族の脱毛の状況
- 現在使っている薬、サプリメント、過去に使った育毛剤などの名前
- これまでにかかった病気、健康診断で指摘されたこと
- 最近の急な体重の変化の有無
来院でもオンラインでも、お薬手帳と健康診断の結果は、手元に出せるようにしておいてください。オンライン診療で本人確認のために準備する物は、記事「オンライン診療の本人確認で準備するもの」を見てください。
治療の選択肢は推奨度とあわせて聞く
指針が説明を求める「代替的治療法」を聞くときには、日本皮膚科学会の診療ガイドラインの推奨度が手がかりになります。ガイドラインの表1によると、男性型脱毛症では、フィナステリドの内服、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用が推奨度Aです。ただし、フィナステリドとデュタステリドの内服は、女性ではDとされています。性別によって推奨度が異なる治療があるので、医師に説明を受けるときは、自分の場合の位置づけを確かめてください。
推奨度はガイドラインの分類で、個々の人への効果を保証するものではありません。区分の意味と免責事項の読み方は、記事「男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方」にまとめています。医師が勧める治療に推奨度の高い薬と低い薬が混ざっているときは、なぜその組み合わせなのかを尋ねてください。国内で承認されていない薬や使い方が含まれる場合は、記事「未承認薬を使う自由診療で確認したい5つの表示」の項目も合わせて確かめられます。
費用と契約は、診察のあとにゆっくり確かめる
指針は、代替的治療法の説明に、患者が負担すべき費用が大きく異なる場合は、それぞれの費用を含めるとしています。次の項目は、その場で口頭の説明を聞くだけでなく、書面や画面で受け取れるかを確かめてください。
- 薬代、診察料、検査の費用を含めた、最初の1回に支払う総額
- 治療を続けた場合の、12か月の合計額の目安
- 定期購入や、まとめて契約する形になっているかどうか
- 解約や返金の期限と、手続の方法
- 途中でやめたときの精算の方法
国民生活センターは、令和8年(2026年)6月23日の公表資料で、オンライン診療の相談事例を挙げています。その中には、10分程度の診療のあとに1年分の薬代を説明され、その場では断りづらく了承した事例(ニキビ治療)や、途中で服用をやめたのに次の1年分の薬が届いた事例(AGA治療)があります。同センターは、オンライン診療を受けるときは、治療内容、処方薬、副作用などのリスク、万が一のときの対応について、医師からしっかり説明を受けるよう助言しています。解約できる場合でも条件が付されていることが多いため、内容と解約条件、とくに長期間の処方は事前によく確認するようにとも書いています。
厚生労働省は、消費者庁と連携して、美容医療を受ける人向けのチェックリストを示しています。確かめる点は次の4つです。
- 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できるか
- 効果だけでなく、リスクや副作用なども知り、納得したか
- ほかの方法や選択肢の説明も受け、自分で選択したか
- その美容医療は「今すぐ」必要か
同省は、4つすべてにチェックが入らない場合や、希望していない施術を勧められた場合などは、改めて医師から十分な説明を受けたうえで、もう一度よく考えて決めるよう呼びかけています。チェックリストは、美容目的の施術の多くは緊急性がなく、「今契約すれば安くなる」などの勧誘に十分気をつけるよう書いています。このチェックリストは美容医療を受ける人に向けたものですが、国民生活センターの相談事例と同様に、自由診療の契約を結ぶ前の確認として参考になります。
その場で決めなくてもよいかどうかは、医療機関の運用や契約の内容によって違います。決めきれないときは、見積りや契約書の控えを受け取り、持ち帰って検討できるかを尋ねてください。値段の表示の読み方は記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」に、定期購入の最終確認画面で見る項目は記事「定期購入の最終確認画面で見るべき6つの項目」にあります。服用をやめたときの扱いは、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」で、薬の側から確かめられます。
説明に疑問が残ったとき
説明に疑問が残るときは、その場で決めずに、改めて医師に尋ねてください。厚生労働省のチェックリストのページは、美容医療の施術で万が一合併症が起きたときの相談先として、都道府県や保健所設置市区が設ける医療安全支援センターと、消費者ホットラインを挙げています。契約内容や解約条件に関する相談先は、消費者ホットライン「188」です。窓口の一覧は、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」にあります。
予約の前に医療機関そのものを公的な情報で確かめる方法は、記事「AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる」で扱っています。
初回カウンセリングに持っていく質問
以下は、診療情報の提供等に関する指針、診療ガイドライン、厚生労働省と国民生活センターの資料を踏まえた、このサイトからの提案です。
- 医師の診察がいつ行われ、治療の内容は診察のあとに医師が決めるのかを尋ねた
- 症状と診断名、診断の根拠、ほかの原因を調べる必要があるかの説明を受けた
- 治療の方針と、効果を見直す時期、診察を受ける間隔の説明を受けた
- 薬の成分名、飲み方、国内での承認の状況、注意が必要な副作用の説明を受けた
- ほかの治療の選択肢と、それぞれの長所、短所、費用の違いの説明を受けた
- 副作用が出たときの連絡先と、受診できる医療機関を確認した
- 最初の支払額と12か月の合計、定期購入かどうか、解約と返金の条件を書面で受け取った
- その場で決めず、持ち帰って考える時間があるかを確認した
次に読む
- AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる
- 男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方
- 予約から診療後までの流れ(基礎ガイド。診察の前後の流れを一覧にする)
- 費用を見るときのチェックポイント(基礎ガイド。費用の項目の見方)
参考にした一次情報
内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針の策定について」平成15年9月12日医政発第0912001号。別添の指針2(定義)、3(一般原則)、6(診療中の説明)、7(1)(診療記録の開示)
- 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日医政発0815第21号。第1の1(無資格者による診断等)、2(看護師等のみの治療行為等)、3(メール等のみの診断・処方等)
- 厚生労働省「確認してください!美容医療を受ける前にもう一度!」チェックリスト4項目と詳細版PDF(別添2)
- e-Gov法令検索「医療法」第1条の4第2項
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」PDF・日皮会誌127(13) 2763-2777, 2017。3.診断、表1
- 国民生活センター「ニキビ、AGA治療や痩身目的等のオンライン診療のトラブルにご注意」2026年6月23日公表。相談事例と消費者へのアドバイス