厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、触診等ができないなどの理由でオンライン診療で得られる情報は限られるとして、対面診療を組み合わせることを原則としています。日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版)は、男性型脱毛症の診断を問診と視診で行うとし、拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになるとしています。診察の方法、薬の受け取り方、通院の頻度、症状が出たときの連絡先、費用の内訳は、オンラインでも来院でも医療機関ごとに確かめる点です。予約の前に、同じ項目で比べてください。
二つの形式の位置づけ
厚生労働省は、令和8年(2026年)4月に改訂した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で、オンライン診療を次のように定めています。医師と患者の間で、情報通信機器を通して、患者の診察と診断、診断結果の伝達、処方などの診療行為をリアルタイムで行う行為です。この記事では、この指針を「指針」と書きます。同省の「オンライン診療について」のページは、オンライン診療は直接の対面による診療と異なり触診等ができないため、医師が得られる情報が限られると説明しています。そのうえで、対面診療と適切に組み合わせて実施することが基本で、医師が適切でないと判断した場合には利用できないとしています。
指針は、「最低限遵守する事項」として、医師が定める診療計画に、オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせに関する事項(頻度やタイミング等)を含めるよう求めています。このため、「オンラインか来院か」は、どちらか一方だけで最後まで通す二択とは限らず、医療機関が決める組み合わせの中で、どこまでを画面越しに行うかの違いと考えると比べやすくなります。これは指針の文言ではなく、このサイトからの見方です。
診察で医師が得る情報
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」(以下「診療ガイドライン」)は、男性型脱毛症の診断を、問診と視診で行うものとしています。問診では家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診では額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認します。拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになるとしています。
同じ診療ガイドラインは、男性型脱毛症の診断は比較的容易としたうえで、円形脱毛症の亜型などを除外することが大切だとしています。女性型脱毛症では、全身性疾患や貧血、急激なダイエット、薬剤などによる脱毛の除外も挙げています。持病、服用中の薬、最近の体重の変化は、オンラインでも来院でも、問診で伝えられるように準備してください。
オンライン診療の診察について、指針は、得られる情報が視覚及び聴覚に限られる中で、疾病の見落としや誤診を可能な限り防ぐ必要があるとしています。「最低限遵守する事項」としては、直接の対面診察と同等でないにしても、これに代替し得る程度の有用な情報を得ることと、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む手段を採ることを挙げています。同じ指針は、画像や文字等のやりとりを補助的な手段として使うことは妨げないとしつつ、オンライン診療は文字、写真及び録画動画のみのやりとりで完結してはならないとしています。
患者の状態について十分に必要な情報が得られていると判断できない場合について、指針は、速やかにオンライン診療を中止し、直接の対面診療を行うよう求めています。推奨される事項としては、実際に使う情報通信機器を用いた試験を直接の対面で行い、画像の色彩や動作等を確認しておくことが望ましいとしています。
来院の診察は、オンライン診療を対象とするこの指針の定めの外にあります。来院の場合は、拡大鏡やダーモスコピーで頭皮を診るかどうかを、予約の前に尋ねてください。オンラインの場合は、頭皮や髪を画面でどのように診るのかを尋ねておくと、診察の流れが分かります。
初回の診察の流れ
指針は、オンライン診療の初診は、原則として「かかりつけの医師」が行うとしています。かかりつけの医師以外が初診から行う場合は、診療前相談を経るなどの条件があり、診療前相談の結果、オンライン診療を受けられないこともあります。診療前相談の費用については、医療機関のホームページ等で示すこととしています。初診で処方できる薬にも制限があります。条件の全体は、記事「初診からオンライン診療を受けるときのルール」にまとめています。
同じ指針は、初診からオンライン診療を行った場合、医師が診察の後に、次回の診察の日時と方法、症状が悪化したときの対面診療の受診先などの方針を説明するものとしています。オンラインでの診療を続けるときは、できるだけ速やかに診療計画を定めて保存するものとしています。診療計画の項目は、記事「オンライン診療の「診療計画」で確認したい9つの項目」にあります。
来院の初診の流れは、医療機関ごとに違います。次の点を、医療機関に尋ねてください。
- 予約が必要か
- 診察にかかる時間と、持ち物
- その日のうちに、診察から処方まで進むのか
診察のあとの段取りを比べる
診察のあとの段取りは、次の表の項目で比べられます。オンライン診療の欄には指針などが示す内容と尋ねる点を、来院の欄には医療機関に尋ねる点を書いています。
| 項目 | オンライン診療 | 来院 |
|---|---|---|
| 薬の受け取り | 医療機関から届くのか、処方箋をもとに薬局が調剤して届けるのかを確認する。発送の時期と、受け取れなかったときの扱いも尋ねる | 薬を受け取る場所(医療機関の中か、処方箋を持って行く薬局か)と、薬の説明を受ける相手を尋ねる |
| 継続の診察 | 診療計画に、オンライン診療と対面診療・検査の組み合わせ(頻度やタイミング等)と、診療時間(予約制等)を含めることになっている。診察のたびに、医師が実施の可否を判断する | 次回の来院の時期、予約の取り方、通院の頻度と1回にかかる時間を尋ねる |
| 検査 | 検査が必要になったときに受ける場所と、その費用を尋ねる | 検査の有無と、受ける時期、その日に結果が出るのかを尋ねる |
| 症状が出たとき | 診療計画に、急病急変時の対応方針を含めることになっている。医師は医療機関に所属し、その問い合わせ先を明らかにしていることも、指針の定めである | 連絡先、受付の曜日と時間、診察の日以外に相談できるかを尋ねる |
| 担当する医師 | 複数の医師が行う予定があるときは、診療計画にその医師の氏名とどの場合にどの医師が行うかを示すことになっている | 毎回同じ医師が診るのか、担当が変わるのかを尋ねる |
薬が届くまでのルールは、記事「オンライン診療で処方された薬が届くまでのルール」で説明しています。診療計画に基づく対面診療への切り替えと受診先は、記事「オンライン診療から対面診療に切り替わるとき」にあります。
症状が出たときの連絡
指針は、オンライン診療を行う医師に、患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関で直接の対面診療を行える体制を整えておくことを求めています。急病急変の患者には原則として直接の対面による診療を行い、容態が安定した段階でオンライン診療の適用を検討してもよいとしています。
国民生活センターは、副作用などの症状が出た場合には、速やかに医療機関を直接受診するよう助言しています。診察を受けた医療機関に連絡がつく時間帯と、そこで診てもらえない場合の受診先を、あらかじめ控えておいてください。
植毛など施術を伴う治療
診療ガイドラインは、自毛植毛術を、フィナステリド及びデュタステリドの内服やミノキシジルの外用による効果が十分でない症例に対し、他に手段がない状況で行うものと位置づけています。十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には行うよう勧め、女性型脱毛症には行ってもよいとしています。推奨度は、男性型脱毛症がB、女性型脱毛症がC1です。
自毛植毛術は、施術を行う医療機関で受ける治療です。オンラインで相談を始めた場合は、相談した医療機関と施術を行う医療機関が同じかどうかを、予約の前に尋ねてください。
費用で比べる項目
費用は、形式の名前ではなく、項目ごとに同じ条件で金額を並べて比べてください。基礎ガイド「オンラインクリニックの選び方」の考え方にそろえると、形式をまたいで比べられます。
| 項目 | オンライン診療 | 来院 |
|---|---|---|
| 診察料 | 初診と再診の料金。診療前相談がある場合は、その費用と、オンライン診療に進めなかったときの扱い | 初診と再診の料金。診察のたびにかかるか |
| 薬代 | 薬の名称、数量、1回分の期間、契約の期間 | 薬の名称、数量、1回分の期間、まとめて契約する場合の期間 |
| 配送料と支払方法 | 配送料が毎回かかるか、次回の配送と決済の予定はいつか | 薬局で受け取る場合に、薬局での支払いが別にかかるか |
| 検査費 | 検査の有無、受ける場所、費用 | 検査の有無、受ける時期、費用 |
| 自分で負担するもの | 診察に使う端末と通信環境、診察に使う時間 | 交通費、移動と待ち時間、通院のために調整する仕事や予定 |
| やめるとき | 解約の期限と方法、未発送分の精算、返金の条件 | まとめて契約した分の精算、返金の条件 |
保険診療と自由診療の違いは、記事「自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと」にあります。価格の表示を読むときの確認点は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」にまとめています。
契約の条件はどちらの形式でも確かめる
国民生活センターは2026年6月23日、ニキビ、AGA治療、痩身目的などのオンライン診療について、処方薬の定期購入にかかるトラブルが目立つとして注意を呼びかけました。AGA治療の相談事例では、1年分の治療薬を画面上で選んで支払い、途中で服用をやめたのに、医師の問診もなく1年分の薬がまた届いたとされています。
同センターは、オンライン診療の受診後に処方薬を購入する場合、定期購入になっているケースが多くみられるとしています。解約できる場合でも条件が付されていることが多いため、内容と解約条件、とくに長期間の処方は事前によく確認するよう求めています。比べるときに見たいのは、定期的な処方や配送があるかどうかより、その条件を申込みの前に確かめられるかどうかです。
この助言は、オンライン診療の相談事例に対するものです。来院の医療機関でも、複数回分の治療をまとめて契約する場合は、途中でやめたときの精算と返金の条件を、契約書で確かめてください。不安を感じたときや解約でトラブルになったときの相談先は、消費者ホットライン「188」です。ほかの窓口は、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」にあります。
自分に合う形を考える
以下は、指針、診療ガイドライン、国民生活センターの資料を踏まえた、このサイトからの提案です。どちらの形式が合うかは、次の項目を書き出すと考えやすくなります。
- 通える範囲に、AGAの診察を行う医療機関があるか
- 通院に使える曜日と時間帯、移動にかかる時間はどのくらいか
- 持病や服用中の薬があり、診察で直接診てもらいたい事情があるか
- 画面越しの診察で、頭皮や髪の様子を医師に伝えられる環境があるか
- 診察のあとの薬の受け取り方は、自分の生活に合うか
- 診察の頻度と検査の予定を、続けられそうか
- 症状が出たときに、連絡できる窓口と受診先があるか
- 診察料、薬代、配送料、検査費、移動の負担を、12か月の合計で並べたか
形式の名前よりも、診察の方法、症状が出たときの連絡先、費用の内訳、契約の条件を、同じ質問で尋ねることが、比べるときの土台になります。気になる点が残ったときは、予約の前に医療機関へ問い合わせてください。
次に読む
- AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる
- オンラインAGA診療の基礎(基礎ガイド。オンラインで進めやすいことと確認しにくいこと)
- 予約から診療後までの流れ(基礎ガイド。予約から診察後までの各段階)
- 費用を見るときのチェックポイント(基礎ガイド。支払総額の考え方)
参考にした一次情報
内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」PDF・令和8年4月改訂。Ⅲ1(用語の定義)、Ⅲ2、Ⅴ1の(1)(2)(3)(5)(6)、Ⅴ2の(1)
- 厚生労働省「オンライン診療について」冒頭の「オンライン診療とは」の説明
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」PDF・日皮会誌127(13) 2763-2777, 2017。3.診断、CQ4
- 国民生活センター「ニキビ、AGA治療や痩身目的等のオンライン診療のトラブルにご注意」2026年6月23日公表。相談事例(AGA治療)と消費者へのアドバイス