確かめる項目の基準は、公的な資料にある

診療する医療機関、治療の内容、費用の内訳、契約の条件は、公的な資料で確かめられます。厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」は、医療機関のサイトで自由診療の情報を示す場合、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数、主なリスクや副作用を載せることを求めています。同じガイドラインは、他の医療機関より優れているという表現、根拠を示さない「○%の満足度」、患者の体験談、説明が不十分な治療前後の写真を医療広告として認めていません。医療機関は、同省の「医療情報ネット(ナビイ)」で検索できます。治療法ごとの推奨度は、日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)に一覧があります。国民生活センターは、オンライン診療で処方薬が定期購入になっていた相談事例を挙げ、契約内容と解約の条件を事前によく確認するよう助言しています。

確かめる順番

厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(令和8年(2026年)3月30日最終改正。この記事では「広告のガイドライン」と書きます)は、自由診療について、保険診療と異なり、その内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るとしています。このため、サイトの印象や目立つ価格ではなく、同じ項目を同じ順番で調べることが、候補を比べるときの土台になります。この記事では、次の4つを順に確かめ、最後に広告の表現の見方を加えます。

  • 診療を行う医療機関と医師
  • 治療の内容と推奨度
  • 費用の内訳
  • 契約の条件と相談先

比べる軸の一覧は、基礎ガイド「オンラインクリニックの選び方」にあります。この記事は、各項目を公的な資料で確かめる方法を扱います。広告のガイドラインに沿って情報を載せている医療機関のサイトでは、ここに挙げる項目の多くを、予約の前にサイトの上で確かめられます。確かめられない項目が残ったときは、医療機関に問い合わせてください。

1 診療を行う医療機関と医師

広告のガイドラインは、医療機関のサイトで広告できる事項の制限を外す(限定解除)ための要件として、表示される情報について患者が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することなどを挙げています。問い合わせ先とは、電話番号やメールアドレスなどです。自由診療については、通常必要とされる治療内容や費用と、主なリスクや副作用の情報を提供することも要件で、この記事の2と3で触れます。問い合わせ先は、予約の前に疑問を尋ねる窓口にもなるので、最初に控えてください。

オンライン診療では、サイトを運営する会社と、診療を行う医療機関が別であることがあります。同じガイドラインは、患者がオンライン診療を受ける場所を提供する「オンライン診療受診施設」について、自ら医療を提供するものではないことを患者が理解できるように明示する必要があるとしています。連携する具体的な医療機関名を明示することが望ましいともしています。来院型でも、サイトの名称と医療機関の正式な名称が違うことがあります。診療を行う医療機関の名称、所在地、管理者の医師名をサイトで探し、見当たらなければ問い合わせてください。

医療機関は、厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」で検索できます。同省の説明によると、医療機関が都道府県知事に報告した情報を、住民や患者が医療機関を適切に選べるように提供する制度で、平成18年(2006年)の医療法改正で導入されました。令和6年(2024年)4月から、全国を1つのシステムにまとめて運用されています。診療日や診療科目などの一般的な情報、対応可能な疾患や治療内容、提供しているサービスから検索できます。検索で見当たらないときは、サイトに書かれた正式な名称と所在地で検索し直し、それでも見当たらなければ医療機関に問い合わせてください。医師の氏名の確かめ方と、見当たらないときの調べ方は、記事「医師等資格確認検索と医療情報ネットの使い方 医師の免許と医療機関を確かめる」で説明しています。

2 治療の内容と推奨度

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、男性型脱毛症の治療法に、臨床試験などの根拠の強さをもとに推奨度を付けています。この記事では「診療ガイドライン」と書きます。推奨度の区分と、男性型脱毛症に対する治療法の推奨度は次のとおりです。

A(行うよう強く勧める) フィナステリドの内服、デュタステリドの内服、ミノキシジルの外用
B(行うよう勧める) 自毛植毛術、LEDおよび低出力レーザー照射、アデノシンの外用
C1(行ってもよい) カルプロニウム塩化物、t-フラバノン、サイトプリンおよびペンタデカン、ケトコナゾールの外用、かつらの着用
C2(行わないほうがよい) ビマトプロストおよびラタノプロストの外用、成長因子導入および細胞移植療法
D(行うべきではない) ミノキシジルの内服、人工毛植毛術

診療ガイドラインは、項目によっては推奨度が分類の判断基準にそのまま当てはまらず、委員会の合意(コンセンサス)で決めたものがあるとしています。免責事項では、診療ガイドラインは個々の症例に応じて柔軟に使うもので、医師の裁量権を規制し治療方針を限定するものではないとしています。保険適応外治療や未承認薬の使用には、各医療機関の承認や、患者あるいは家族のインフォームド・コンセントが前提になると述べています。クリニックの治療メニューを見るときは、治療の名称だけでなく、薬の成分名と、推奨度のどこに当たるかを書き出してください。推奨度は、診察で医師に治療を選んだ理由を尋ねるときの手がかりにしてください。読み方は、記事「男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方」にまとめています。

ミノキシジルの内服は、推奨度がDの治療です。診療ガイドラインの解説は、降圧剤として開発されたが日本では認可されておらず、男性型脱毛症の治療薬として認可されている国もないとしています。そのうえで、安易な処方や個人輸入での服用を、医薬品医療機器等法の観点から問題視しています。これは2017年版の記載で、承認の状況は、記事「ミノキシジルの外用薬と内服薬の違いと承認の状況」で確かめられます。

国内で承認されていない薬や、承認された効能や用法と異なる使い方をする薬を自由診療で使う場合、広告のガイドラインは、未承認であることの明示などを限定解除の要件に加えています。求められる5つの表示は、記事「未承認薬を使う自由診療で確認したい5つの表示」にあります。同じガイドラインは、自由診療の治療の主なリスクや副作用の情報も、利点や長所のみを強調せず、分かりやすく載せることを要件にしています。治療ごとの主なリスクがサイトのどこに書かれているかも、成分名と一緒に控えてください。

診察の中身も調べる点です。診療ガイドラインは、男性型脱毛症の診断を、問診で家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診で額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認するものとしています。拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになるとしています。国民生活センターが令和8年(2026年)6月23日に公表した資料は、相談事例の1つとして、オンライン診療でAGA治療薬の1年分を購入した相談者の事例を挙げています。途中で服用をやめていたのに、1年後に医師の問診もなく1年分の薬が届いたという内容です。定期的な処方や配送そのものが問題なのではありません。医師の診察が初回だけでなく続くのか、薬を続けるかどうかを誰がいつ判断するのかを、申込みの前に確かめてください。

3 費用の内訳

費用の載せ方にも決まりがあります。自由診療の治療を紹介するとき、広告のガイドラインは、治療の名称や最低限の治療内容と費用だけを紹介することで患者を誤認させ、不当に誘引すべきではないとしています。通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を載せて、適切かつ十分な情報を分かりやすく提供することを求めています。標準的な費用が明確でない場合は、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなどして、可能な限り分かりやすく示すこととしています。掲載場所についても、リンクを張った先のページに載せたり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で載せたりしないこととしています。

費用を強調した広告は、品位を損ねるおそれがある広告として、同じガイドラインに挙げられています。具体例は「今なら○円でキャンペーン実施中!」「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」「○○治療し放題プラン」などです。誇大広告の例としては、大きく表示された値段が5か所以上を同時に実施したときの費用で、1か所だけでは倍近い費用がかかる美容外科の自由診療の広告を挙げています。小さな文字で注釈が付いていても、注釈を見落とすと常識的に判断できる場合は、誇大広告として取り扱うとしています。

費用の項目は、医療機関によって名称や含まれる範囲が異なることがあります。比べるときは、次の項目に分けて書き出してください。

  • 初診料と再診料(オンライン診療では、診察料や処方料の有無)
  • 薬代(成分名、1日の量、1か月あたりの金額)
  • 血液検査などの検査の費用と、検査が必要になる条件
  • 注入治療や自毛植毛術など、回数で数える治療の1回の費用と、必要とされる回数
  • 配送料、手数料、キャンセル料
  • 定期契約の途中でやめたときの精算の方法

候補ごとに同じ項目で書き出し、12か月を目安に合計を出してください。12か月は、このサイトが比べやすいように置いた期間です。合計の安さだけでなく、診察が続くか、副作用の相談先があるかも、あわせて見てください。「月額○円から」「初回○円」の表示の読み方は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」にあります。

4 契約の条件と相談先

国民生活センターの資料の相談事例に見られるのは、次の3つです。

  • 処方薬が定期購入になっていたこと
  • 1年分など長期間分の薬が処方されたこと
  • 解約や返品を断られたこと

確かめる点は、定期購入であること自体ではなく、その条件が申込みの前に分かるかどうかです。同じ資料の消費者へのアドバイスのうち、AGA治療に関わる点は次のとおりです。

  • 治療内容や処方薬、副作用などのリスク、万が一のときの対応について、医師からしっかり説明を受けること
  • 処方薬の購入は定期購入になっているケースが多く、解約できる場合でも条件が付いていることが多いため、契約内容と解約条件、とくに長期間の処方は事前によく確認すること
  • 不安を感じたり、解約でトラブルになったりした場合は、早めに消費生活センターなどに相談すること
  • 副作用などの症状が出た場合は、速やかに医療機関を直接受診すること

定期購入の最終確認画面で見る項目は、記事「定期購入の最終確認画面で見るべき6つの項目」に、AGA治療のオンライン診療の事例は、記事「AGA治療のオンライン診療で目立つ「処方薬の定期購入」のトラブル」にまとめています。来院型の医療機関でも、複数回分の治療をまとめて契約する場合は、途中でやめたときの精算と返金の条件を、契約書で確かめてください。契約や支払いの相談先は、消費者ホットライン「188」です。医療の内容への疑問を受け付ける窓口を含めた相談先の一覧は、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」にあります。

広告の表現を見る

広告のガイドラインは、他の医療機関と比較して優良である旨の広告を、事実であっても認めていません。「№1」「最高」などの最上級の表現が例です。根拠や調査方法を示さない「○%の満足度」は、虚偽広告として取り扱うとしています。同省の事例解説書は、「発毛率は99%」のように根拠を示さない治療の効果の数字を、広告が禁止される事例に挙げています。患者の主観に基づく治療の内容や効果に関する体験談と、誤認させるおそれがある治療前後の写真も、医療広告としては認められていません。こうした表示は、診療の質をそのまま示すものではありませんが、広告のガイドラインが認めていない表示です。見つけたときは、その根拠を医療機関に尋ね、答えも判断の材料にしてください。見分け方は、記事「医療広告で注意したい表現の見分け方」で説明しています。

確かめた後に決めるとき

確かめた結果は、点数にして順位を付けるためのものではありません。空欄が残った項目は、予約の前に医療機関へ質問し、答えの分かりやすさも含めて決めてください。重視する条件の書き出し方は、基礎ガイド「オンラインクリニックの選び方」で説明しています。

予約の前にそろえること

以下は、広告のガイドライン、診療ガイドライン、国民生活センターの資料を踏まえた、このサイトからの提案です。

  • 診療を行う医療機関の名称、所在地、管理者の医師名を医療情報ネットで確認し、問い合わせ先を控えた
  • 治療の名称と薬の成分名、診療ガイドラインの推奨度、未承認薬かどうかを書き出した
  • 治療ごとの主なリスクや副作用の説明が、サイトのどこにあるかを確認した
  • 初診料、再診料、薬代、検査、配送料を同じ項目で並べ、12か月の合計を出した
  • 定期購入かどうか、解約の期限と方法、途中でやめたときの精算を確認した
  • 副作用が出たときの連絡先と、診察が続く頻度を確認した
  • 最上級の表現、根拠のない数字、体験談がサイトにないかを見た

次に読む

参考にした一次情報

内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。