厚生労働省の薬価基準収載品目リスト(令和8年(2026年)11月1日適用)の内用薬、注射薬、外用薬に、フィナステリドとミノキシジルは見当たりません(2026年11月時点)。デュタステリドは0.5mgの品目が載っていますが、リストに効能は書かれていません。同省の資料は、保険診療では原則として、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬剤を用いることはできないとしています。男性型脱毛症の診察や薬が保険診療か自由診療かは、受診先の表示と説明で確かめてください。保険診療と保険外の診療の併用は、一定のルールのもとで認める制度があると、同省は説明しています。
保険診療で使える薬は国が決めている
公的医療保険を使う診療(保険診療)の基本は、記事「自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと」で説明しています。
厚生労働省保険局の「保険診療の理解のために【医科】」(平成30年度(2018年度)版)は、保険医の守る規則である療養担当規則の内容として、次の2点を挙げています。
- 特殊な療法または新しい療法等は、厚生労働大臣の定めるもののほか行わないこと(第18条。先進医療などは例外)
- 厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物は、患者に施用も処方もしないこと(第19条。治験などの場合を除く)
同じ資料は、投薬の実施方針として、薬剤の使用には医薬品医療機器等法の承認事項(効能・効果、用法・用量、禁忌等)を守るとも書いています。この2つから、保険診療で薬を使うには、国の一覧に載っていることと、承認された効能・効果の範囲で使うことの両方が関わると読めます。
薬価基準収載品目リストで成分名を調べる
厚生労働省は「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」で、医療機関等で保険診療に用いられる医療用医薬品として官報に告示されている(薬価基準に収載されている)品目を公開しています。令和8年11月1日適用の版では、内用薬と注射薬が11月1日適用品目、外用薬が10月14日収載品目を反映しています。
この版の内用薬、注射薬、外用薬のExcel版で、AGAの治療で話題になる成分名を検索すると、次のとおりです。
| フィナステリド | 3つの一覧のいずれにも見当たりません(2026年11月時点)。男性型脱毛症の薬として承認されたプロペシア錠の名前も、内用薬の一覧に見当たりません。 |
|---|---|
| デュタステリド | 0.5mgの錠剤とカプセルが、先発品と後発品を合わせて14品目載っています。0.1mgの品目と、ザガーロカプセルの名前は、内用薬の一覧に見当たりません。 |
| ミノキシジル | 3つの一覧のいずれにも見当たりません(2026年11月時点)。 |
| カルプロニウム塩化物 | 5%の外用液が外用薬の一覧に載っています。一覧に効能は書かれていません。 |
デュタステリドの扱いには注意が必要です。一覧には効能の欄がないので、載っている0.5mgの品目がAGAに使えるかどうかは、この一覧だけでは分かりません。ザガーロカプセルの添付文書は、効能又は効果を「男性における男性型脱毛症」とし、用法及び用量を、通常は0.1mgを1日1回、必要に応じて0.5mgを1日1回としています。
添付文書は、薬の使い道にも限りを付けています。フィナステリド(プロペシア錠)の添付文書は、効能又は効果を「男性における男性型脱毛症の進行遅延」とし、男性型脱毛症のみの適応で、他の脱毛症に対する適応はなく、女性に対する適応もないとしています。デュタステリドの添付文書も、男性型脱毛症のみの適応で、他の脱毛症に対する適応はないとしています。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、カルプロニウム塩化物外用の有用性は現段階では十分に実証されていないとしています。そのうえで、5%カルプロニウム塩化物は長年にわたり保険適応となっており、わが国での診療実績も多いとして、推奨度を「C1(行ってもよい)」にしています。同じガイドラインの免責事項は、保険診療上認められていない治療法も取り上げて推奨度を付けたと述べ、ガイドラインは保険診療の手引き書ではないとしています。推奨度が高い治療でも、保険診療で受けられるかどうかは推奨度から読み取れません。
一覧にない理由と、これからの見通し
フィナステリドとミノキシジルが一覧に載っていない理由を説明した記述は、この記事で参照した資料には含まれていません。AGA治療を保険の対象に加える予定や検討を述べた資料も、含まれていません。
一覧の版によって、結果は変わることがあります。確かめるときは、厚生労働省のページで最新の版を開き、内用薬のExcel版で成分名を検索してください。載っていても、同省の資料は、承認事項(効能・効果など)を守って使うとしています。
皮膚科で診てもらうときに確かめること
日本皮膚科学会のガイドラインは、男性型脱毛症の診断は比較的容易だとしています。そのうえで、男性型脱毛症では円形脱毛症の亜型を、女性型脱毛症では全身性疾患や貧血などに伴う脱毛を除外することが大切だとしています。
こうした原因を調べるための診察や検査が保険診療になるかどうかは、この記事で参照した資料には書かれていません。病名や診察の内容によって扱いが変わる可能性があるので、予約の前か診察の場で、診察料や検査の費用が保険診療か自由診療かを尋ねてください。
保険医療機関が、療養の給付と直接関係のないサービス等の費用を別に受け取る場合の手続きは、「保険診療の理解のために」に示されています。内容と料金の掲示、患者への説明と文書による同意、社会的に妥当な金額、他の費用と区別した内容の分かる領収証の発行です。「雑費」などのあいまいな名目は認められていません。ここに挙げた手続きは、同資料が「療養の給付と直接関係ないサービス等」について示すものです。自費の診療や薬の請求に当たるかどうかは、この資料からは分かりません。領収証の内訳は、保険診療の部分とそれ以外を見分ける手がかりになります。
保険診療と保険外診療を組み合わせるとき
保険診療と保険外の診療を組み合わせる場合の制度について、厚生労働省は「保険外併用療養費制度について」で、必要かつ適切な医療は基本的に保険収載しているとしています。そのうえで、保険収載されていないものの、将来的な保険収載を目指す先進的な医療等について、一定のルールにより保険診療との併用を認めているとしています。制度は、次の3つに分かれています。
- 評価療養(先進医療、治験に係る診療、薬事承認後で保険収載前の医薬品の使用など)
- 患者申出療養(国内未承認の医薬品等を使いたいという患者の申出を起点とする仕組み)
- 選定療養(予約診療、時間外診療、後発医薬品のある先発医薬品の処方の希望など、患者の選択で特別の料金を支払うもの)
このうち選定療養は、将来的な保険導入を前提としないものとされています。
「保険診療の理解のために」は、保険診療の窓口で別に費用を受け取れる「療養の給付と直接関係ないサービス等」の例として、予防接種や美容形成(しみとり等)を挙げています。一方で、承認前の医薬品(治験に係るものを除く)、適応外使用の医薬品(評価療養を除く)、保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く)は、「サービス等とはいえないもの」の例に挙がっています。
AGAの薬や治療がこの3つの類型のどれかに当たるのかは、この記事で参照した資料からは分かりません。診察は保険診療で、薬は自費だと説明されたときは、どの部分がどの扱いなのかを、受診先に尋ねてください。「保険が使えます」と言われたときも、診察、検査、薬のうち、どの部分に保険が使えるのかを聞いてください。
医療費控除との関係
保険の適用の有無と、確定申告の医療費控除の扱いは、別に確かめることです。記事「AGA治療の費用は医療費控除の対象になるのか」は、国税庁の対象費用の一覧が保険診療と自由診療を区別していないことを説明しています。同じ記事は、AGA治療の費用を個別に取り上げた項目が国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例に見当たらない(2026年10月時点)ことも示しています。自分の場合に当たるかどうかは、税務署に確かめてください。
女性の薄毛の場合
フィナステリドの添付文書は、女性に対する適応はないとしています。デュタステリドの添付文書の効能又は効果も、男性に限られています。女性の薄毛の診断と治療法は、記事「女性の薄毛で受診するときの確認点 女性型脱毛症の診断と治療の推奨度」で扱っています。ミノキシジルの外用薬と内服薬の承認の状況は、記事「ミノキシジルの外用薬と内服薬の違いと承認の状況」にあります。
受診先に確認すること
保険診療と自由診療で窓口の支払いがどう違うかは、冒頭で挙げた記事で説明しています。費用を比べるには、次の点を受診先に確かめて、同じ項目で書き出してください。
- 診察料は、保険診療か自由診療か
- 薬は、保険診療か自由診療か。成分名と1回に支払う額はいくらか
- 検査が必要になる場合は、その費用と、保険診療か自由診療か
- 保険診療と自由診療が混じる場合は、どの部分がどちらで、領収証でどう区別されるか
- 自由診療の場合は、治療内容、標準的な費用、治療期間と回数、主なリスクや副作用が書かれているか
- 配送料、手数料、定期契約の途中でやめたときの精算はどうなるか
12か月分の合計は、診察料、薬代、検査、配送料を1回ごとに書き出し、通う回数をかけて足して出せます。表示の読み方は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」に、費用の見方は基礎ガイド「費用を見るときのチェックポイント」にあります。初回の相談で聞くことは、記事「AGAの初回カウンセリングで聞くこと 誰が何を説明し、何を伝えるか」にまとめています。
次に読む
- 自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと(保険診療と自由診療の基本)
- AGA治療の費用は医療費控除の対象になるのか(申告の考え方)
- AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる
- 費用を見るときのチェックポイント(支払総額のそろえ方)
参考にした一次情報
内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年11月1日適用)」内用薬・注射薬は11月1日適用品目、外用薬は10月14日収載品目を反映したExcel版。冒頭の説明と凡例
- 厚生労働省保険局「保険診療の理解のために【医科】(平成30年度)」PDF・療養担当規則第18条と第19条、投薬・注射の実施方針、保険外併用療養費制度、サービス等に対する実費徴収
- 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」評価療養、患者申出療養、選定療養の分類と選定療養の類型
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」PDF・免責事項、疾患概念・病態と診断、カルプロニウム塩化物外用の解説
- PMDA 医療用医薬品の添付文書等「フィナステリド」プロペシア錠の添付文書(2023年8月改訂・第4版)。効能又は効果と、その関連する注意
- PMDA 医療用医薬品の添付文書等「デュタステリド」ザガーロカプセルの添付文書(2025年8月改訂・第2版)。効能又は効果、用法及び用量