診断で確かめることも、治療の推奨度も男性と違う

日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)は、女性では頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンが観察され、更年期に多発するとしています。同じガイドラインは、診断では、慢性休止期脱毛、全身性疾患や貧血、急激なダイエットに伴う脱毛、治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛などの除外が大切としています。推奨度は、女性型脱毛症に対してフィナステリドとデュタステリドの内服がD(行うべきではない)、ミノキシジルの外用(1%)がA(行うよう強く勧める)です。2種類の内服薬の添付文書は、適応を男性に限っています。女性の薄毛が気になる人は、原因の確認と治療の選択について、医師に相談してください。

男性型との違い

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、頭髪が細く短くなる病態そのものは、男女を問わず同一としています。一方で、現れ方は違います。同じガイドラインは、男性の診断では、視診で額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認するとしています。女性では、頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンとして観察されるとしています。発症の時期も男性と異なり、更年期に多発するようになると述べています。

病名にも理由があります。ガイドラインは、男性ホルモン依存性では病態が説明できない場合もあるとしています。また、現在は「男性型脱毛症」より「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」の病名を用いることが、国際的にも多くなっているとしています。こうした病態の違いを考慮して、このガイドラインも病名として女性型脱毛症を用いています。この記事も、女性の場合はこの病名で書きます。

診断で除外を求められる脱毛

ガイドラインは、診断の項で、女性型脱毛症では次のものなどを除外することが大切としています。

  • 慢性休止期脱毛
  • 膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
  • 貧血、急激なダイエット、その他の消耗性疾患などに伴う脱毛
  • 治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛

これは、診察で医師が確かめる点の一覧です。読む人にこれらのどれかが当てはまるという意味ではありません。治療の話に入る前に、これらをどのように確かめるのかを、受診で尋ねてください。

後で触れる一般用医薬品の説明書にも、似た内容があります。甲状腺疾患、急激なダイエット、円形脱毛症などによる脱毛の人は、使用しないよう求めています。市販薬を使うかどうかを考える人は、この点を確かめてください。

女性型脱毛症に対する治療法の推奨度

推奨度は、臨床試験などの根拠をもとに付けられていますが、一部は委員会の合意(コンセンサス)で決められています。区分の意味と読み方は、記事「男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方」にまとめています。ガイドラインの表1は、男性型と女性型で推奨度が異なる治療法を分けて載せています。表1と各CQの推奨文から、女性型脱毛症にあたる部分を抜き出すと次のとおりです。

治療法 女性型脱毛症の推奨度 ガイドラインが述べている理由
フィナステリドの内服 D(行うべきではない) 女性137名を対象とした1年間のランダム化比較試験で、硬毛数はフィナステリド群とプラセボ群のどちらも減り、群の間に有意差はなかった。妊婦などへの投与は禁忌
デュタステリドの内服 D(行うべきではない) 女性型脱毛症に対する臨床試験は実施されていない。女性への投与は禁忌
ミノキシジルの外用 A(行うよう強く勧める)。女性型脱毛症では1% 1%、2%、5%を用いた女性1,242名のシステマティック・レビューで有効性が明らかになり、国内の女性280名の試験でも1%で有意な発毛促進効果が示された
自毛植毛術 C1(行ってもよい) ランダム化比較試験などは実施されていない。フィナステリド・デュタステリドの内服やミノキシジルの外用で効果が十分でなく、他に手段がない場合に、十分な経験と技術を有する医師が行うときに限る
アデノシンの外用 C1(行ってもよい) 女性に対する有効性を示す根拠はまだ不足しているが、副作用が軽微な点や女性用の製品が販売されている点も考慮した

ミノキシジルの外用について、ガイドラインは、有害事象として、男女を通して瘙痒、紅斑、落屑、毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが報告されているとしています。使い始めの時期に休止期脱毛がみられることがあり、外用をやめる原因になるおそれがあるため、患者への説明が必要としています。

表1には、男性型と女性型で分けていない治療法もあります。分けていないからといって、女性での根拠が同じように示されているとは限りません。ガイドラインの本文には、次のように書かれています。

  • カルプロニウム塩化物、t-フラバノン、ケトコナゾールの外用(いずれもC1)は、女性型脱毛症に対する臨床試験は実施されていないとしています
  • LEDおよび低出力レーザー照射(B)は、女性型脱毛症に対する3件のランダム化比較試験を解析しており、2017年版の時点で機器は国内ではまだ認可されていないとしています
  • かつらの着用(C1)は、脱毛症状を改善するものではないが、通常の治療で改善しない場合やQOLが低下している場合に行ってもよいとしています
  • 人工毛植毛術(D)は、男性型脱毛症にも女性型脱毛症にも行うべきでないとしています

ミノキシジルの内服も、男性型脱毛症と女性型脱毛症のどちらにもD(行うべきではない)です。理由と承認の状況は、記事「ミノキシジルの外用薬と内服薬の違いと承認の状況」で説明しています。

ガイドラインは2017年版です。免責事項では、個々の症例に応じて柔軟に使うもので、医師の裁量権を規制し、治療方針を限定するものではないとしています。診察では、推奨度を手がかりに、医師がその治療を選ぶ理由を尋ねてください。

女性用の一般用医薬品の説明書

PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトには、ミノキシジルを1%配合した一般用医薬品「リアップリジェンヌ」の説明書が掲載されています。説明書は、この薬を、女性の壮年性脱毛症に対して効能・効果が認められた医薬品としています。区分は第1類医薬品です。同じ成分の他の製品の説明書は、製品ごとに確かめてください。

効能・効果 壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防
用法・用量 成人女性(20歳以上)が、1日2回、1回1mLを脱毛している頭皮に塗布する
使用しない人 未成年者(20歳未満)、妊婦または妊娠していると思われる人、授乳中の人、妊娠や出産に伴って脱毛している人、壮年性脱毛症以外の脱毛症の人や原因のわからない脱毛症の人、男性など
使用前に医師か薬剤師に相談する人 高血圧や低血圧の人、心臓または腎臓に障害のある人、むくみのある人、甲状腺機能障害の診断を受けている人、高齢者(65歳以上)など
続けるとき 効果がわかるまで少なくとも6か月間、毎日使用する。6か月使用して改善が認められない場合は、使用を中止して医師か薬剤師に相談する。6か月以内でも、脱毛状態の悪化や、頭部全体の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛が見られた場合は、同じように相談する

説明書は、妊娠中の使用について安全性が十分に確認されておらず、ミノキシジルは母乳中に移行すると説明しています。頭部全体が脱毛している場合や、6か月使っても改善がない場合の相談については、女性に多く見られる甲状腺疾患による脱毛など、壮年性脱毛症以外の脱毛症の可能性があると書いています。

説明書は、副作用の可能性がある症状として、次のようなものを挙げています。

  • 頭皮の発疹・発赤、かゆみ
  • 頭痛、めまい
  • 胸の痛み、心拍が速くなること
  • 原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ

こうした症状があらわれたときは、直ちに使用を中止して医師か薬剤師に相談するよう求めています。頭皮にだけ使い、内服しないことも求めています。

2つの内服薬の添付文書は、適応を男性に限っている

ガイドラインが女性型脱毛症にDとしている2つの成分について、医療用医薬品の添付文書の記載を並べます。対象は、フィナステリドの「プロペシア錠」と、デュタステリドの「ザガーロカプセル」の添付文書です。以下では「フィナステリドの添付文書」「デュタステリドの添付文書」と書きます。

項目 フィナステリドの添付文書 デュタステリドの添付文書
効能又は効果 男性における男性型脱毛症の進行遅延 男性における男性型脱毛症
適応についての注意 男性における男性型脱毛症のみの適応で、他の脱毛症に対する適応はない。女性に対する適応はない 男性における男性型脱毛症のみの適応で、他の脱毛症に対する適応はない
禁忌 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性(成分への過敏症の既往歴がある患者も) 女性(成分や他の5α還元酵素阻害薬への過敏症の既往歴がある患者、小児等、重度の肝機能障害のある患者も)
薬の取扱い 分割・粉砕しない。粉砕・破損した場合は、妊婦または妊娠している可能性のある女性と授乳中の女性は取り扱わない 経皮吸収されるため、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れない。触れた場合は直ちに石鹸と水で洗う

フィナステリドの添付文書は、女性に対する適応はないとしています。そのうえで、海外で実施した閉経後女性を対象とする12か月間の比較試験(137例)で、有効性は認められなかったと書いています。

フィナステリドの添付文書は、妊婦に投与すると、薬の作用(DHTの低下)により男子胎児の生殖器官などの正常発育に影響を及ぼすおそれがあると説明しています。デュタステリドの添付文書は、ラットとウサギの試験で雄胎児の外生殖器の雌性化がみられ、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されたと書いています。授乳中の女性には、どちらも投与しないとしています。乳汁に移行するかどうかは、どちらの添付文書も不明としています。

家族が男性型脱毛症の薬を処方されている場合も、女性は、添付文書の取扱いの注意を確かめてください。妊娠の予定がある人や授乳中の人は、薬の保管と取扱いについて、医師か薬剤師に尋ねてください。

受診のときに尋ねること

ガイドラインと添付文書の内容を踏まえて、女性の薄毛の相談で尋ねたい点を挙げます。オンライン診療に特有の確認点は、基礎ガイド「オンラインAGA診療の基礎」にあります。

原因の確認

ガイドラインが除外を大切とする脱毛を、診察でどのように確かめるのかを尋ねてください。血液検査が必要かどうか、必要な場合は費用がどうなるかも、あわせて確認してください。次の点も、診察の前に整理しておくと、説明が受けやすくなります。

  • 薄毛に気づいた時期と、その後の経過
  • 最近の体重の変化や食事の変化
  • 妊娠、出産、避妊用ピルの使用の中止の有無
  • 使っている薬と、受けている治療

治療の選択

提案された治療について、成分名と、ガイドラインでの女性型脱毛症に対する推奨度を尋ねてください。推奨度がDの内服薬を提案されたときは、女性に使う理由と、添付文書の適応との関係を尋ねてください。国内で承認された薬を承認された効能の範囲で使うのか、そうでないのかも、尋ねる点です。承認されていない薬や、承認された効能と異なる使い方で自由診療を行うときに求められる表示は、記事「未承認薬を使う自由診療で確認したい5つの表示」にあります。

妊娠と授乳

妊娠の予定、妊娠中、授乳中のいずれかに当てはまる場合は、診察の最初に伝えてください。外用薬の説明書も、2種類の内服薬の添付文書も、妊婦や授乳中の人への使用や取扱いに、はっきりとした制限を設けています。

費用と続け方

薬代や診察料、検査の費用、続ける期間の目安を確認してください。外用薬の説明書は、効果がわかるまで少なくとも6か月間の使用を求めています。その間の費用と、効果をどのように確かめるのかも、見通しを聞いておいてください。見方は、基礎ガイド「費用を見るときのチェックポイント」で説明しています。

診察の前に確かめること

以下は、ガイドラインと2つの添付文書、1つの説明書を踏まえた、このサイトからの提案です。

  • 薄毛に気づいた時期、体重の変化、妊娠や出産、ピルの使用、使っている薬を書き出した
  • 貧血や慢性甲状腺炎など、別の原因を診察でどう確かめるのかを尋ねる項目に入れた
  • 提案された治療の成分名と、女性型脱毛症に対する推奨度を尋ねる項目に入れた
  • 妊娠の予定と授乳の有無を、診察の最初に伝えると決めた
  • 男性型脱毛症の内服薬の適応が男性に限られていることを、添付文書で確かめた
  • 薬代、診察料、検査の費用と、続ける期間の目安を尋ねる項目に入れた

治療や契約で困ったときの相談先は、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」にあります。

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