この記事で参照したフィナステリドとデュタステリドの添付文書には、投与前や投与中に血液検査を定期的に行うことを求める記載は見当たりません(2026年11月時点)。肝臓については、デュタステリドの添付文書が重度の肝機能障害のある人への投与を禁じ、どちらの添付文書も重大な副作用に肝機能障害を挙げています。PSAについては、どちらの添付文書も、前立腺がんの診断の目的で測る場合に2倍した値を目安に評価することとしています(デュタステリドは6か月以上投与している場合)。日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版)は、女性型脱毛症では全身性疾患や貧血などによる脱毛の除外が大切としていますが、血液検査を求める文言は、この記事で読んだ部分に見当たりません。検査を行うかどうかは、処方する医師が診察で判断します。
検査を提案されたときに知っておきたいこと
AGAのクリニックで、治療の前や途中に血液検査を提案されることがあります。この記事では、その理由として考えられる点を、公的な資料に書かれている範囲で確かめます。資料は、フィナステリド(プロペシア錠)とデュタステリド(ザガーロカプセル)の添付文書、日本皮膚科学会の診療ガイドライン、厚生労働省のオンライン診療の指針です。薬の販売名は、添付文書がどの製品のものかを示すためだけに使います。
検査の進め方は、医療機関によって異なることがあります。どの進め方が適切かは、この記事では判断しません。資料に書かれていることと、書かれていないことを分けて示し、受診の前に聞く点を最後にまとめます。
健康診断でPSAや肝機能の値を見るときの注意は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」にあります。この記事は、クリニックが提案する検査を扱います。
肝臓についての添付文書の記載
どちらの添付文書も、薬は主に肝臓で代謝されるとしています。肝臓に関する記載は、項目ごとに次のとおりです。
| 禁忌(投与しないこと) | プロペシア錠は、成分に過敏症の既往歴のある人と、妊婦、妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性を挙げており、肝臓に関する項目は含まれていません。ザガーロカプセルは、成分や他の5α還元酵素阻害薬に過敏症の既往歴のある人、女性、小児等に加えて、「重度の肝機能障害のある患者」を挙げています |
|---|---|
| 9.3 肝機能障害患者 | プロペシア錠は、肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していないと書いています。ザガーロカプセルは、重度の人には投与しないこと、それ以外の肝機能障害のある人に投与した場合の薬物動態は検討されていないと書いています |
| 11.1 重大な副作用 | プロペシア錠は「肝機能障害」(頻度不明)です。ザガーロカプセルは「肝機能障害、黄疸」(いずれも頻度不明)で、AST、ALT、ビリルビンの上昇等を伴うことがあるとしています |
| 11.2 その他の副作用 | プロペシア錠には「肝臓」の欄があり、AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇が頻度不明として載っています。ザガーロカプセルには、肝臓の欄はありません |
ザガーロカプセルの添付文書は、重度の肝機能障害のある人に投与しない理由を、主に肝臓で代謝されるため血中濃度が上昇するおそれがあるからとしています。重度かどうかを、どの検査値や状態で判断するのかは、この添付文書に書かれていません。
どちらの添付文書も、副作用の項目の前文で、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこととしています。日本皮膚科学会の診療ガイドラインも、フィナステリドについて、頻度は明らかではないが、まれに肝機能障害があらわれることがあるとしています。
こうした記載を踏まえると、治療の前や途中に肝機能の値を調べることには、肝臓の状態を把握し、異常を早く見つけるという目的が考えられます。これは、このサイトの見方で、添付文書や診療ガイドラインがそう述べているわけではありません。
PSAについての添付文書の記載
PSA(前立腺特異抗原)について、ザガーロカプセルの添付文書は、前立腺がんのスクリーニングにおける重要な指標としています。プロペシア錠の添付文書は、国内の24歳から50歳の男性型脱毛症患者で、血清PSAの濃度が約40%低下したとしています。前立腺がんの診断の目的で測るときは、2倍した値を目安に評価することとしています。
ザガーロカプセルの添付文書は、重要な基本的注意の8.2で、PSAに影響を与えるため、前立腺がん等の検査に際しては次の点に注意することとしています。
- 投与6か月以降のPSA値を新たなベースラインとし、その後は適宜PSA値を測定して変動を評価すること
- 6か月以上投与している人では、測定値を2倍した値を目安に基準値と比べること
- 投与中の人で、投与前のPSA値が基準値未満でも、前立腺がんの診断を除外しないよう注意すること
- PSAの検査を受けるときは、服用を検査をする医師に知らせるよう、患者を指導すること
これらは、前立腺がん等の検査に際しての注意として書かれています。
日本皮膚科学会の診療ガイドラインも、どちらの薬についても、同じ目的でPSAを測る場合は2倍した値を目安に評価すべきとしています。詳しい読み方は、先の健康診断の記事にあります。クリニックが投与前にPSAを測ることを提案する場合は、その値を何に使うのかを尋ねてください。これは、このサイトからの提案です。
診療ガイドラインが診断について書いていること
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、診断の項で、男性型脱毛症の診断を、問診で家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診で確かめるものとしています。拡大鏡やダーモスコピーの使用も、診断の手助けになるとしています。
同じ項は、男性型脱毛症の診断は比較的容易だが、ゆっくりと頭髪が抜け頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型などを除外することが大切としています。女性型脱毛症では、次のものなどを除外することが大切としています。
- 慢性休止期脱毛
- 膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
- 貧血、急激なダイエット、その他の消耗性疾患などに伴う脱毛
- 治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛
これらの除外の方法として血液検査を求める文言は、この記事で読んだ診療ガイドラインの範囲に見当たりません(2026年11月時点)。診察でほかの原因をどう確かめるかは、医師が個々の状況に応じて決めます。女性の診断と治療の推奨度は、記事「女性の薄毛で受診するときの確認点 女性型脱毛症の診断と治療の推奨度」にまとめています。
検査を「しない」場合の考え方
この記事で参照した2つの添付文書には、投与の前や投与中に血液検査を定期的に行うことを求める記載は見当たりません(2026年11月時点)。ただし、これは検査が不要という意味でも、必要という意味でもありません。添付文書は副作用の観察を十分に行うことを求めていますが、観察の方法は具体的に書かれていません。
両方の添付文書の用法及び用量に関連する注意には、6か月以上投与する場合も定期的に効果を確認し、継続投与の必要性を検討することとあります。これは効果の確認についての記載で、検査の種類は示していません。PSAについては、先に見たザガーロカプセルの8.2が、前立腺がん等の検査の場面で適宜測ることを書いています。
検査をするかどうか、するならどの項目をいつ行うかは、処方する医師の判断です。検査の有無は、問診や診察を含む診療全体の中の一つです。検査の有無だけで、診療を比べることはできません。
その判断を助けるために、受診の前に次のことを医師に伝えてください。
- 肝臓の病気にかかったことがあるか、指摘されているか
- 服用している薬とサプリメント(ほかの医療機関の薬を含む)
- 直近の健康診断や人間ドックの結果
結果の用紙があれば、持参するか、写真を残しておいてください。同じ項目を重ねて測る必要があるかどうかを、医師が判断する材料になります。
オンライン診療の場合の確かめ方
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年(2026年)4月改訂)は、オンライン診療を行う医師が「診療計画」を定め、保存することとしています。診療計画に含める事項の一つが、オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせ(頻度やタイミング等)です。初診からオンライン診療を行い、その後も続ける場合も、できるだけ早く診療計画を定めることとしています。
この指針の記述は、検査の組み合わせを診療計画に含める点までです。AGAの治療で採血が必要になるのか、必要な場合にどこで受けるのかは、この指針の読んだ範囲に書かれていません。オンライン診療の医療機関には、次のように尋ねてください。
- 検査を行う場合、どこで、いつ受けるのか
- 提携する検査施設や、お住まいの近くの医療機関で受けられるのか
- 結果は、いつ、どのように伝えられるのか
- 検査を受けないまま処方を受けることはできるのか
オンライン診療と来院の違いは、記事「AGA治療はオンライン診療と来院のどちらで受けるか 違いを比べる項目」で比べています。
検査の費用は、先に聞く
自由診療では、検査を含む費用を医療機関が決めます。検査の費用が診察料や薬代に含まれるのか、別に請求されるのかは、事前に確かめてください。保険診療との違いは、記事「自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと」にあります。
初回の費用を比べるときは、検査の費用も同じ表に入れてください。検査が初回だけか、続けて行われるのかによって、12か月の合計が変わります。費用の内訳の聞き方は、記事「AGAの初回カウンセリングで聞くこと 誰が何を説明し、何を伝えるか」にあります。
検査について医師に聞くこと
以下は、添付文書、診療ガイドライン、オンライン診療の指針を踏まえた、このサイトからの提案です。
- 検査の項目は何か(肝機能、PSA、そのほか)
- その検査を提案する理由は何か
- 治療の前だけか、治療を続けるあいだも行うのか、その頻度はどのくらいか
- 費用はいくらか、診察料や薬代に含まれるのか
- オンライン診療の場合、検査をどこで受けるのか
- 結果の用紙や数値の控えをもらえるか
- 異常な値が出たときに、どう対応するのか
- 検査を行わない場合は、経過をどのように確かめるのか
次に読む
- AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値
- フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる
- AGAの初回カウンセリングで聞くこと 誰が何を説明し、何を伝えるか
- 予約から診療後までの流れ
参考にした一次情報
内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。
- PMDA 医療用医薬品の添付文書等「フィナステリド」プロペシア錠の添付文書(2023年8月改訂・第4版)。2、7、9.3、11.1、11.2、12
- PMDA 医療用医薬品の添付文書等「デュタステリド」ザガーロカプセルの添付文書(2025年8月改訂・第2版)。2、7、8.2、9.3、11.1、11.2
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」PDF・日皮会誌127(13) 2763-2777, 2017。3.診断、CQ1の解説、CQ2の解説
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」PDF・令和8年4月改訂。Ⅴ1(3)②ⅰ、ⅱ(診療計画に含める事項、初診からの場合)