推奨度、法律、公表システムの3つで確かめる

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、成長因子導入および細胞移植療法の推奨度をC2(行わないほうがよい)としています。解説は、多血小板血漿(PRP)などを注入する治療の臨床試験の多くが、限られた施設での段階にあるとしています。同じ解説は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則って施術する必要のあるものも多いとしています。この法律の対象になる治療の提供計画は、厚生労働省のウェブサイトで公表されています。

診療ガイドラインは何と書いているか

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」を、この記事では「診療ガイドライン」と書きます。この記事で参照したのは2017年版です。頭皮への注入を伴う治療のうち、診療ガイドラインで該当する項目は、CQ13「成長因子導入および細胞移植療法は有用か?」です。記載は次のとおりです。

推奨度 C2(行わないほうがよい)
推奨文 成長因子導入および細胞移植療法は行わないほうがよい
C2の判断基準 有効のエビデンスがない、あるいは無効であるエビデンスがある

C2の1つ下の区分はD(行うべきではない)で、基準は、無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがあることとされています。診療ガイドラインは、本文の推奨度が表の判断基準に一致しない項目があり、委員会の合意で決めたものがあるとしています。推奨度の読み方の全体は、記事「男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方」にまとめています。

C2とされた理由

診療ガイドラインの解説は、まず対象を説明しています。毛を誘導する力をもつ間葉系細胞を直接移植する方法や、その分泌物を含む培養上清から作った生成物などを、脱毛症の部位に注入して発毛の促進を期待する治療が、試みられようとしているという内容です。

そのうえで、脂肪組織由来幹細胞の培養上清由来物質とPRPについて、ランダム化比較試験や症例集積研究が行われていると述べています。ただし、これらの臨床試験の多くは、限られた施設での、倫理委員会の承認を必要とする「先進医療」の段階にあり、安全性なども含め、有効性は決して十分に検証されているとはいえないとしています。

結論の部分で解説は、今後が期待される治療法ではあるとしています。ただし「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」などの法規に則って施術する必要のあるものも多く、現時点では広く一般に実施できるとは言い難いため、行わないほうがよいことにすると書いています。

診療ガイドラインの位置づけ

診療ガイドラインの免責事項は、個々の症例に応じて柔軟に使うものであり、医師の裁量権を規制し治療方針を限定するものではないとしています。保険適応外治療や未承認薬の使用にあたっては、各医療機関の承認や、患者あるいは家族のインフォームド・コンセントが前提になるとも述べています。

提案の理由を医師に尋ね、納得したうえで決めるときの手がかりとして、診療ガイドラインの記載を使ってください。

再生医療等安全性確保法の対象になるとき

厚生労働省の説明資料「再生医療等の安全性の確保等に関する法律について」(この記事では「再生医療等安全性確保法」と書きます)は、この法律が対象とする「再生医療等技術」を、次のように説明しています。

  • 目的は、人の身体の構造や機能の再建、修復、形成、または人の疾病の治療、予防であること
  • 用いるものは、細胞加工物(人または動物の細胞に培養その他の加工を施したもの)か、核酸等であること
  • 安全性の確保に関する措置が必要なものとして、政令で定められていること

どの治療が対象になるかは、方法ごとに決まります。同資料が紹介する施行通知は、「加工」に当たるものとして、細胞の人為的な増殖や分化、活性化を目的とした薬剤処理、非細胞成分との組み合わせなどを挙げています。組織の分離や細切、細胞の洗浄、冷凍、解凍、抗生物質による処理、滅菌などは「加工」とみなさないとしています。ただし、本来の細胞と異なる構造や機能を発揮することを目的として細胞を使う場合は、この限りではないとされています。

頭皮への注入治療が、この法律の対象になるか、またどの区分になるかは、この記事で参照した資料には書かれていません。使う血液や細胞の種類、加工や培養の有無、目的によって変わるため、治療ごとに、医療機関が提出した計画で確かめてください。

3つの区分と委員会

同じ説明資料は、再生医療等を、人の生命と健康に与える影響の程度に応じて3つに分けています。

第一種 ヒトに未実施など高リスク(iPS細胞、遺伝子改変技術等)。特定認定再生医療等委員会の意見を聴く
第二種 現在実施中など中リスク(自家体性幹細胞等)。特定認定再生医療等委員会の意見を聴く
第三種 リスクの低いもの(体細胞を加工等)。認定再生医療等委員会の意見を聴く

区分の分け方は、資料の流れ図に示されています。細胞の種類、遺伝子を導入する操作の有無、投与を受ける人以外の細胞かどうか、幹細胞を利用しているか、培養を行っているか、といった点で分かれます。

「認定再生医療等委員会」は、再生医療等技術や法律の専門家などの有識者からなる合議制の委員会で、厚生労働大臣の認定を受けたものです。「特定認定再生医療等委員会」は、そのうち特に高度な審査能力と第三者性をもつものとされています。

医療機関が行うこと

説明資料によると、この法律の対象になる再生医療等を提供する医療機関には、次のことが求められます。

  • 再生医療等提供計画を作り、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、あらかじめ厚生労働大臣または地方厚生局長に提出すること
  • 人員、設備、細胞の入手、製造と品質管理などを定めた再生医療等提供基準を守ること
  • 再生医療等を受ける人に、文書により適切な説明を行い、同意を得ること
  • 苦情と問合せに対応すること
  • 再生医療等の提供に起因すると疑われる疾病等の発生を知ったときに、厚生労働大臣または地方厚生局長と委員会へ報告すること
  • 提供の状況を、1年ごとに委員会と国へ報告すること

治療として行う場合の「妥当性」について、説明資料は施行通知の記載を紹介しています。有効性が安全性のリスクを上回ることが十分に予測されることを含み、提供計画には、その科学的な根拠を示す必要があるという内容です。

同資料と厚生労働省の「e-再生医療」のページは、計画を提出せずに再生医療等を提供することに罰則があるとしています。同省は、公表の目的を、再生医療等を受けようとする患者の選択に役立つ情報を広く知らせるためとしています。一覧に載っていることは、治療の効果を示すものではありません。

提供計画を調べる

厚生労働省の「再生医療等提供機関の情報について」のページによると、同省は、提供機関が提供する再生医療等の情報をインターネットで公表しています。公表される事項は、次のとおりです。

  • 再生医療等提供機関の名称、住所、管理者の氏名
  • 提供する再生医療等と、その区分
  • 計画に記載された認定再生医療等委員会の名称
  • 受ける人への説明文書と同意文書の様式
  • 法に基づく命令をした場合は、その内容

同ページは、再生医療等を受けようとするときに、提供機関の名称と受けようとする再生医療等の名称を確認し、医師から十分な説明を受けて、理解し納得したうえで検討するよう案内しています。調べ方は次のとおりです。

  1. 厚生労働省の「再生医療等提供機関の情報について」のページを開く
  2. 「再生医療等提供機関一覧(治療)」の第一種、第二種、第三種の各一覧を開く
  3. 診療を行う医療機関の名称と、提案された治療に近い名称の計画を探す
  4. 計画の行にある委員会の名称と、説明文書と同意文書の様式を見る

一覧には、医療機関の名称、都道府県、住所、管理者の氏名、再生医療等の名称、認定再生医療等委員会の名称などの列があります。長い一覧なので、ブラウザのページ内検索を使うと探しやすくなります。一覧の「再生医療等の名称」は計画に書かれた名称で、案内の名称と言葉が違うことがあります。使う血液や細胞の種類、疾患の名称でも探してください。

2026年11月時点で、同省の第二種と第三種の一覧には、脂肪由来の幹細胞や毛根の細胞を用いて脱毛症や毛髪を対象にする名称の計画が載っています。第三種の一覧には、PRPを用いて毛髪、薄毛、育毛を対象にする名称の計画も載っています。区分は、計画ごとに医療機関が届け出た内容です。研究として行われる計画は、同ページの案内によると、治療の一覧ではなく、臨床研究等提出・公開システム「jRCT」で検索します。

一覧に見当たらないときは、すぐに結論を出さず、医療機関に確認してください。確認する点は、その治療が再生医療等安全性確保法の対象かどうか、対象なら計画の名称と区分は何か、の2つです。対象外とする場合は、その理由も尋ねてください。

広告のガイドラインが載せることを求めていること

厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(令和8年(2026年)3月30日最終改正。この記事では「広告のガイドライン」と書きます)は、患者が自ら求めて見るウェブサイトなどで、本来は広告できない事項を載せる場合の要件(限定解除)を定めています。自由診療を載せるときの要件は、次のとおりです。

  • 表示される情報について、問い合わせ先を記載するなどして、容易に照会できるようにすること
  • 通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を載せること
  • 主なリスクや副作用などの情報を、分かりやすく載せること

同じ要件の中で、費用や治療内容を、リンク先のページに載せたり、利点や長所に比べて極端に小さな文字で載せたりしないこととされています。治療の名称と最低限の内容や費用だけを紹介して、患者を誤認させ不当に誘引すべきではないともしています。インターネット上のバナー広告や、検索結果に広告として表示されるものは、この限定解除の対象にならないとされています。

広告のガイドラインは、「未承認医薬品等」を自由診療で使う場合に、さらに5つの事項を求めています。「未承認医薬品等」は、承認されていない医薬品、医療機器、再生医療等製品や、承認された範囲と異なる使い方をするものです。5つの事項は、記事「未承認薬を使う自由診療で確認したい5つの表示」にまとめています。その1つが、医薬品副作用被害救済制度などの救済の対象にならないことの明示です。制度の内容は、記事「医薬品副作用被害救済制度の基礎知識」にあります。

ある注入治療が「未承認医薬品等」に当たるかどうかは、使う製品と使い方がこの定義に当てはまるかで決まります。この記事で参照した広告のガイドラインの部分には、個別の治療名でその区分を示した記載は含まれていません。また、再生医療等安全性確保法に基づく提供計画の表示を求める記載も含まれていません。提供計画は、患者が公表システムで確かめられます。広告の見分け方は、記事「医療広告で注意したい表現の見分け方」で説明しています。

同意する前に聞くこと

以下は、診療ガイドライン、説明資料、広告のガイドラインを踏まえた、このサイトからの提案です。診察では、次の質問を書き出して持っていくと、答えを記録しやすくなります。

  • 治療の名称と、注入するものは何か(自分の血液、脂肪、細胞のどれか。培養や加工をするか)を尋ねた
  • 再生医療等安全性確保法に基づく提供計画があるかどうか、計画の名称と区分(第一種から第三種)を尋ねた
  • 計画に記載された認定再生医療等委員会の名称を聞き、厚生労働省の一覧で、医療機関と計画を確かめた
  • 説明文書と同意文書の様式を受け取り、署名の前に持ち帰って読めるかを確かめた
  • 診療ガイドラインがC2としていることを踏まえて、この治療を提案する理由と根拠を尋ねた
  • 標準的な費用、1回の費用、必要な回数と期間、追加の費用を、書面で確かめた
  • 主なリスクや副作用、起きたときの連絡先と、その費用を誰が負担するかを確かめた
  • 未承認医薬品等に当たる場合は、5つの事項がウェブサイトに載っているか、診察でも同じ内容の説明があるかを確かめた

費用の項目の並べ方は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」と、基礎ガイド「費用を見るときのチェックポイント」にあります。

気になる点があるとき

厚生労働省は、「再生医療等情報提供・通報窓口」を設けています。窓口の案内によると、提供計画が未提出と思われる場合や、計画の記載と異なる方法で実施している場合、安全性上の懸念がある場合などの情報を受け付けています。受付の対象外には、広告の表示に関する情報や、医療費の返還などの個別の民事紛争などがあります。

窓口の案内では、広告の表示は「医療機関ネットパトロール」、契約トラブルや高額請求などの消費者問題は消費者ホットライン「188」が案内されています。広告の通報先は、記事「気になる医療広告を見つけたときの通報先と相談先」にまとめています。体調の変化があるときは、医療機関で診察を受けてください。

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