「初期脱毛」の語は添付文書になく、ガイドラインはミノキシジル外用の初期の休止期脱毛に触れている

フィナステリドとデュタステリドの添付文書には、「初期脱毛」という語が含まれていません。日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)は、男女ともにミノキシジル外用の初期に休止期脱毛がみられることがあり、患者への説明が必要としています。抜け毛が増えたときは、処方薬なら自分でやめたり量を変えたりせず、処方した医師か薬剤師に相談してください。一般用医薬品の説明書が使用の中止を求める症状があるときは、説明書のとおり使用を中止して相談してください。

よくある問いに、公的な資料はどう答えているか

フィナステリドで初期脱毛はあるか フィナステリドの添付文書には「初期脱毛」の語が含まれず、副作用の表にも脱毛の項目が含まれていません。ガイドラインのフィナステリド内服の解説にも、投与の初期に抜け毛が増えることを述べた記載は見当たりません
デュタステリドで初期脱毛はあるか デュタステリドの添付文書には「初期脱毛」の語が含まれていません。副作用の表に「脱毛症(主に体毛脱落)」が頻度不明で載っていますが、時期の説明はありません。ガイドラインのデュタステリド内服の解説にも、初期の抜け毛の増加を述べた記載は見当たりません
ミノキシジルで初期脱毛はあるか ガイドラインは、ミノキシジル外用の初期に休止期脱毛がみられることがあるとしています。一般用医薬品の説明書には、使い始めの一時的な抜け毛の増加に触れた記載が見当たりません
初期脱毛はいつまで続くのか 期間を示した記載は、ガイドライン、添付文書、説明書に見当たりません(2026年11月時点)
初期脱毛がないと効果がないのか 初期脱毛の有無と効果の関係を述べた記載は、見当たりません(2026年11月時点)
抜け毛が増えたのは薬のせいか ガイドラインの診断の項は、男性型脱毛症や女性型脱毛症と区別が必要な脱毛を挙げています。説明書は、使用開始後6か月以内でも、脱毛状態の悪化や急激な脱毛などが見られたときは、使用を中止して医師か薬剤師に相談するよう求めています

参照した資料

この記事で見る資料は、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」、フィナステリドとデュタステリドの添付文書、ミノキシジルを5%配合した一般用医薬品の説明書の4つです。以下では「ガイドライン」「添付文書」「説明書」と書きます。

ガイドラインは平成29年(2017年)の発表です。添付文書は、フィナステリドがプロペシア錠(2023年8月改訂・第4版)、デュタステリドがザガーロカプセル(2025年8月改訂・第2版)のものです。説明書は、第1類医薬品「リアップX5」のものです。どれもPMDA(医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトに掲載されています。読み方の基本は、記事「薬の添付文書と患者向医薬品ガイドの読み方」にあります。

添付文書にある記載

「初期脱毛」の語と、脱毛に関する項目

2つの添付文書を、脱毛に関わる点で並べると次のとおりです。

フィナステリド(プロペシア錠) デュタステリド(ザガーロカプセル)
「初期脱毛」の語 含まれていない 含まれていない
「その他の副作用」の表にある脱毛の項目 含まれていない 皮膚の欄に「脱毛症(主に体毛脱落)」(頻度不明)
効果の確認に関する記載 3か月の連日投与で効果が発現する場合もあるが、効果の確認には通常6か月の連日投与が必要 投与開始後12週間で改善が認められる場合もあるが、治療効果の評価には通常6か月間の治療が必要

デュタステリドの添付文書の表にある「頻度不明」は、頻度が示されていない区分です。多いのか少ないのかは、添付文書に書かれていません。括弧内は「主に体毛脱落」とだけ書かれています。頭髪の抜け毛が増える時期や、その期間を説明した文は、添付文書の同じ箇所に含まれていません。

フィナステリドの添付文書の「その他の副作用」の表は、過敏症、生殖器、肝臓、その他の欄に分かれ、脱毛の項目は含まれていません。副作用の全体は、記事「フィナステリドの副作用 添付文書に書かれた頻度と、疑ったときの動き方」にまとめています。

効果を確かめる時期

どちらの添付文書も、「用法及び用量に関連する注意」で、効果の確認や評価には通常6か月が必要としています。6か月以上投与しても、フィナステリドは進行遅延、デュタステリドは改善がみられない場合は、投薬を中止することとしています。医療用医薬品の添付文書は医師など医療関係者向けの文書で、この「投薬を中止すること」も、処方する側への指示と考えられます。服用する人が自分で判断してやめるよう求めた文とは読めません。

時期ごとの違いは、記事「AGA治療薬の効果はいつから確かめるのか 添付文書と説明書にある期間」に詳しく書いています。

ガイドラインにある記載

男性型脱毛症の定義にある「休止期」

ガイドラインは、疾患概念の項で、男性型脱毛症を次のように説明しています。毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなることが病態の基盤であり、臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象です。

同じ項は、この病態が男女を問わず同一であり、休止期脱毛と異なり、パターン化した脱毛が特徴だとも書いています。この記事で参照した部分には、この定義と、治療を始めたあとの抜け毛の増加を結びつけて説明した記載は含まれていません。

フィナステリドとデュタステリドの解説

ガイドラインは、フィナステリドの内服とデュタステリドの内服を、男性型脱毛症に対して推奨度A(行うよう強く勧める)としています。2つの解説には、投与の初期に抜け毛が増えることや、一時的な脱毛に触れた記載が含まれていません。

ミノキシジル外用の解説

ガイドラインのミノキシジル外用の解説は、副作用として皮膚症状を挙げたうえで、有害事象は必ずしもミノキシジルだけの作用とは言えないとしています。続けて、男女ともにミノキシジル外用の初期に休止期脱毛がみられることがあり、これが外用の中止につながるおそれがあるため、患者への説明が必要だと書いています。

この文が述べているのは、初期に休止期脱毛がみられることがある点と、患者への説明が必要な点です。みられる割合、始まる時期、続く期間、続けてよいかどうかの基準は、参照した部分に含まれていません。ガイドラインがこの記載を、内服のフィナステリドやデュタステリドにも当てはめているかどうかも、書かれていません。ガイドラインは、この項で「休止期脱毛」の意味を説明しておらず、「初期脱毛」と同じものを指すかどうかも書いていません。

一般用医薬品の説明書にある記載

リアップX5の説明書は、男性用の第1類医薬品のものです。女性と20歳未満には使用しないよう定めています。この説明書は、使い始めの期間と、相談が必要な場合を次のように書いています。

使い始めてから 髪が成長するには時間がかかるため、発毛の効果を実感するまで少なくとも4か月間、用法・用量を守って使うよう求めている。「その他の注意」にも、効果がわかるようになるまで少なくとも4か月間、毎日使うことと、有効性は4か月使用後から認められていることが書かれている
6か月間使用して改善が認められないとき 脱毛状態の程度、生毛・軟毛の発生、硬毛の発生、抜け毛の程度のいずれにおいても改善が認められない場合は、使用を中止し、説明書を持って医師か薬剤師に相談する
使用開始後6か月以内でも 脱毛状態の悪化や、頭髪以外の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛などが見られた場合は、使用を中止し、説明書を持って医師か薬剤師に相談する

説明書は、6か月以内の相談を求める理由として、壮年性脱毛症以外の脱毛症であったり、脱毛が他の原因によるものであったりする可能性があることを挙げています。「してはいけないこと」の欄にも、脱毛が急激であったり、髪が斑状に抜けていたりする人は、壮年性脱毛症以外の脱毛症である可能性が高いとして、使用しないよう書かれています。

説明書には、使い始めに一時的に抜け毛が増えることを述べた記載が見当たりません。ガイドラインがいう初期の休止期脱毛と、説明書がいう「脱毛状態の悪化」を見分ける方法も、どちらの資料にも書かれていません。使い始めに抜け毛が増えたときは、どちらにあたるかを自分で決めず、医師か薬剤師に相談してください。説明書が挙げる症状があるときは、説明書のとおり使用を中止して相談してください。

抜け毛の原因は、診察で見きわめるもの

ガイドラインは、診断の項で、男性型脱毛症の診断は比較的容易だとしています。そのうえで、除外することが大切なものとして、ゆっくりと頭髪が抜けて頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型を挙げています。この亜型が男女どちらの診断にかかるのかは、原文の書き方からははっきりしません。女性型脱毛症については、次のものを除外することが大切としています。

  • 慢性休止期脱毛
  • 膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
  • 貧血
  • 急激なダイエット
  • その他の消耗性疾患などに伴う脱毛
  • 治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛

これらは、診断の際に除外するものの一覧で、治療を始めたあとの抜け毛の増加を説明するものとして挙げられたわけではありません。説明書も、甲状腺機能障害の診断を受けている人は、甲状腺疾患による脱毛の可能性があるため、使用前に相談するよう求めています。

原因の見きわめは、診察で行うものです。時期が重なったから薬のせいだと決めたり、逆に関係がないと決めたりしないでください。

参照した資料に記載が見当たらないこと

次の内容は、この記事で参照したガイドライン、添付文書、説明書の上記の箇所には含まれていません(2026年11月時点)。

  • 「初期脱毛」という語の定義
  • 治療を始めたあとに抜け毛が増える人の割合
  • 初期の休止期脱毛と、治療以外の原因による脱毛を見分ける方法

この記事は、ここに挙げた点や、冒頭の表で記載が見当たらないとした点について、期間や割合、意味を示しません。数字や断定に出会ったときは、出どころが公的な資料かどうかを確かめてください。

契約や案内に「初期脱毛」と書かれているとき

契約書や説明の書面に「初期脱毛」の語がある場合は、その書面での意味を確かめてください。この記事で見たとおり、添付文書にこの語は含まれていないため、意味は書面ごとに確かめる必要があります。

以下は、署名の前に確かめたいことについての、このサイトからの提案です。

  • 書面にある「初期脱毛」は、どのような状態を指すと定められているか
  • 初期脱毛かどうかを、誰がどの方法で判断するのか
  • 初期脱毛との判断が、返金や解約の条件に関係するのか
  • 抜け毛が増えたときに受診できる窓口はどこか
  • その受診に、診察料などの費用がかかるのか

回答は、書面に残してもらってください。解約や返金の条件の見方は、記事「AGA治療の契約を途中でやめるとき 解約と返金の条件の見方」にあります。

抜け毛が増えたと感じたとき

以下の1から3は、添付文書、ガイドライン、説明書の記載を踏まえた、このサイトからの提案です。

  1. 薬を始めた日と、抜け毛が増えたと感じた日、ほかに使っている薬や変えたことを書き留めてください
  2. 処方薬は、自分の判断でやめたり、量や回数を変えたりせず、処方した医師の指示を受けてください。一般用医薬品は、説明書が使用の中止を求める症状があれば、説明書のとおり使用を中止してください
  3. 処方した医師か、薬局の薬剤師に連絡して、記録と説明書を見せながら相談してください

説明書は、一般用医薬品を使っている人について、使用開始後6か月以内でも、脱毛状態の悪化、頭髪以外の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛などが見られたときは、使用を中止して相談するよう求めています。こうした抜け毛は、時期を待たずに、早めに受診して相談してください。

体調の変化が一緒にあるときも同じです。副作用かもしれないと思ったときの相談先と報告の仕組みは、記事「副作用かもしれないと思ったときの相談先と報告の仕組み」にあります。

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参考にした一次情報

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