日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)は、日本人男性の男性型脱毛症の発症頻度を、全年齢平均で約30%、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%としています。引用されているのは、1981年の統計と2004年の意識調査です。同じガイドラインは、診断を、問診で家族歴や脱毛の経過を聴き、視診で額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認するものとし、円形脱毛症の亜型の除外が大切としています。フィナステリドとデュタステリドの添付文書は、20歳未満での安全性及び有効性は確立されていないとしています。ミノキシジルを5%配合した第1類医薬品の説明書は、未成年者(20歳未満)は使用しないよう求めています。フィナステリドとデュタステリドの添付文書は、6か月以上投与する場合も定期的に効果を確認し、継続投与の必要性を検討するとしています。
年齢別の頻度とその根拠
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」は、平成29年(2017年)の版です。この記事では「ガイドライン」と書きます。同じガイドラインは、男性型脱毛症を、思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症としています。日本人男性の場合は、20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に完成されると書いています。
ガイドラインは、2017年版の時点で「25年前の本邦における男性型脱毛症の統計」から、日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約30%と報告されているとしています。続けて、この発症頻度は現在もほぼ同程度で、年齢とともに高くなるとして、次の数字を挙げています。
| 20代 | 約10% |
|---|---|
| 30代 | 20% |
| 40代 | 30% |
| 50代以降 | 40数% |
年齢別の数字の出典には、「日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査」(2004年)が挙げられています。全年齢平均の約30%の出典は、1981年の文献です。数字は日本人男性の集団の頻度を示すもので、自分に当てはまるかどうかは、この数字では決まりません。
ミノキシジルを5%配合した第1類医薬品「リアップX5」の説明書にも、年齢に触れた記載があります。壮年性脱毛症を、一般的に遺伝性の薄毛又は抜け毛で、ゆっくりと何年もかかって進行するものとし、早い人では20代から発症することもあるとしています。
診断が先になる理由
ガイドラインは、男性型脱毛症の診断を、問診により家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診により額の生え際が後退し、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認するものとしています。拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになると書いています。
同じ箇所は、男性型脱毛症の診断は比較的容易であるとしたうえで、ゆっくりと頭髪が抜けて頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型を除外することが大切としています。女性型脱毛症については、全身性疾患や貧血などに伴う脱毛の除外も挙げています。
リアップX5の説明書は、使用しない人として、壮年性脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症、甲状腺疾患による脱毛など)の人と、原因のわからない脱毛症の人を挙げ、この薬は壮年性脱毛症でのみ有効としています。脱毛が急激な人や、髪が斑状に抜けている人も使用しない人に挙げ、壮年性脱毛症以外の脱毛症である可能性が高いことを理由にしています。使用前に医師又は薬剤師に相談する人には、家族や兄弟姉妹に壮年性脱毛症の人がいない人も入っています。壮年性脱毛症の発症には遺伝的要因が大きいと考えられるためと書かれています。
受診の前に、次の点をメモしておいてください。
- 気になり始めた時期と、その後の変化
- 家族に薄毛の人がいるか
- 急に抜けたか、斑状に抜けているところがあるか
服用中の薬があれば、あわせて伝えてください。
添付文書と説明書にある年齢の記載
ガイドラインのフィナステリドの解説は、海外の臨床試験は18歳以上の男性に対し行われ、安全性が確認されているとしています。ただし、国内の臨床試験は20歳以上の男性を対象に行われたので、国内では20歳未満に対する安全性は確立していないと書いています。デュタステリドの解説も、国内の男性については、ランダム化比較試験のうち1件の国際臨床試験が20歳以上の男性を対象に行われたので、20歳未満に対する安全性は確立していないとしています。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)が公開している文書には、次のように書かれています。
| プロペシア錠(フィナステリド)の添付文書 | 「20歳未満での安全性及び有効性は確立されていない」。小児等に対する適応はなく、小児等を対象とした臨床試験は実施していない。適応は男性の男性型脱毛症のみ |
|---|---|
| ザガーロカプセル(デュタステリド)の添付文書 | 「20歳未満での安全性及び有効性は確立されていない」。禁忌に小児等を挙げ、小児等には投与しないこととしている。適応は男性の男性型脱毛症のみ |
| リアップX5(ミノキシジル5%)の説明書 | 使用しない人に未成年者(20歳未満)を挙げ、理由を国内での使用経験がないこととしている。用法・用量は成人男性(20歳以上)と書かれている |
ザガーロカプセルの添付文書は小児等を禁忌として投与しないことを求めており、リアップX5の説明書も20歳未満は使用しないよう求めています。20歳未満の人は、薬の話の前に、医療機関で薄毛の原因を診てもらってください。
ガイドラインには、年齢と効果に触れた記載もあります。フィナステリド(1mg/日)を5年間内服した日本人男性801名の観察研究について、40歳未満の症例と重症度の低い症例でより高い効果を示したと書いています。これはランダム化比較試験ではなく観察研究の結果で、20歳未満を対象にしたものでもありません。ガイドラインは、年齢が低いほど効くとも、早く始めるべきだとも書いていません。
効果を確かめる期間は、フィナステリドの添付文書が、効果が確認できるまで通常6か月の連日投与が必要としています。デュタステリドの添付文書も、治療効果を評価するには通常6か月間の治療が必要としています。リアップX5の説明書は、発毛の効果を実感するまで、少なくとも4か月間、用法・用量を守って使うよう求めています。
20代のうちに考えておくこと
長く続くことと費用
プロペシア錠の添付文書は、効果を持続させるためには継続的に服用することとしています。ガイドラインは、フィナステリドについて、内服を中止すると効果は消失すると書いています。このため、治療を考えるときは、数か月分の費用だけでなく、続けた場合の総額も確かめてください。
同じ添付文書は、6か月以上投与する場合であっても定期的に効果を確認し、継続投与の必要性について検討することとしています。続けるかどうかを検討する時期が診察のどこに組み込まれているかを、受診の前に尋ねてください。
クリニックの費用を比べるときは、初診料、再診料、薬代、検査、配送料を同じ項目で並べ、12か月の合計を出してください。12か月は、このサイトが比べやすいように置いた期間です。長く続けるつもりなら、24か月の合計も出してください。表示の読み方は、記事「「月額○円から」「初回○円」の価格表示を読むときの確認点」にあります。診療する医療機関や契約の確かめ方は、記事「AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる」にまとめています。
パートナーの妊娠の計画
フィナステリドの添付文書は、禁忌に、妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳中の女性を挙げています。使う本人が男性でも、取扱いには注意があります。同じ添付文書は、妊婦に投与すると、薬の作用により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあるとしています。そのうえで、患者に説明する事項に、錠剤を分割・粉砕しないことと、粉砕・破損した場合は妊婦などが取り扱わないことを挙げています。
ザガーロカプセルの添付文書は、薬が経皮吸収されることから、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れないこと、触れた場合は直ちに石鹸と水で洗うことを求めています。
パートナーや同居の家族に妊娠の予定がある場合や、妊娠中の場合は、診察のときにそう伝えて、保管と取扱いの方法を確かめてください。薬の違いは、記事「フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる」で並べています。将来子どもを持つ計画があり、服用をやめる時期や、やめた後に残る影響を確かめたいときは、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」を読んでください。精液の質に関する添付文書の記載も、そこにまとめています。
健診と献血
健康診断や献血の問診票には、服用中の薬を尋ねる項目があります。デュタステリドの添付文書は、薬が血清PSAに影響を与えるとしています。PSAは前立腺癌のスクリーニングの重要な指標で、検査を受ける際には服用について検査を行う医師に知らせるよう、患者を指導することとしています。健診の問診票の見方は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」にあります。献血の問診と、薬をやめた後の期間は、記事「AGA治療薬を使っているときの献血 問診で聞かれる薬と期間」にあります。
診察で聞くこと
以下は、ガイドライン、添付文書、説明書を踏まえた、このサイトからの提案です。診察の場で全部を聞く必要はなく、気になる項目から選んでください。
- 薄毛の原因は、問診と視診で、男性型脱毛症と診断されたか。ほかの脱毛の可能性は検討されたか
- 自分の年齢は、使う薬の添付文書の年齢の記載(20歳未満での安全性及び有効性は確立されていない)に当たるか
- 効果を確認する時期はいつで、続けるかどうかを誰がどう判断するのか
- 12か月と、それより長く続けた場合の費用の総額はいくらか
- やめるときの手続きと、定期配送などの精算の条件はどうなっているか
- パートナーが妊娠を予定している場合や妊娠中の場合の、薬の保管と取扱いはどうすればよいか
- 健診や献血の問診で、服用中の薬をどう伝えればよいか
ガイドラインの免責事項は、診療ガイドラインは個々の症例に応じて柔軟に使うもので、医師の裁量権を規制し治療方針を限定するものではないとしています。具体的な判断は、診察を受けて医師と相談してください。
次に読む
- 男性型・女性型脱毛症診療ガイドラインの「推奨度」の読み方
- フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる
- AGAクリニックを選ぶときの確認点 医療機関、治療、費用、契約の順に確かめる
- 予約から診療後までの流れ(基礎ガイド。受診の各段階)
参考にした一次情報
内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」PDF・日皮会誌127(13) 2763-2777, 2017。背景と目的、1.疾患概念、3.診断、CQ1、CQ2、免責事項
- PMDA「プロペシア錠0.2mg/1mg」添付文書の一覧(フィナステリド)2023年8月改訂(第4版)。2.禁忌、5.効能又は効果に関連する注意、7、8.1、9.7
- PMDA「ザガーロカプセル0.1mg/0.5mg」添付文書の一覧(デュタステリド)2025年8月改訂(第2版)。2.禁忌、5.効能又は効果に関連する注意、7、8.1、8.2、9.7
- PMDA「リアップX5」説明書(ミノキシジル5%・第1類医薬品)PDF・2026年11月時点の掲載版。冒頭の案内、使用上の注意、用法・用量、ヘアケアQ&A