頻度の区分と、中止後も続いたとの報告

デュタステリドの添付文書(ザガーロカプセル、2025年8月改訂・第2版)は、重大な副作用に肝機能障害と黄疸(いずれも頻度不明)を挙げています。その他の副作用では、性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)が「1%以上」で、発疹、頭痛、抑うつ気分、乳房障害、腹部不快感が「1%未満」です。性機能不全には、投与中止後も持続したとの報告があると注記されています。国内の52週間の試験(120例)では、副作用が16.7%で、勃起不全10.8%、リビドー減退8.3%、射精障害4.2%でした。気になる症状があるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。

参照する資料

ここで取り上げるのは、デュタステリドの「ザガーロカプセル」の添付文書と患者向医薬品ガイド、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」です。以下では、それぞれ「添付文書」「患者向医薬品ガイド」「ガイドライン」と書きます。ガイドラインは平成29年(2017年)、添付文書は2025年8月、患者向医薬品ガイドは2021年8月の版です。版が異なるので、数字は出典と一緒に読んでください。

同じ成分のほかの製品の添付文書は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトで確かめられます。読み方の基本は、記事「薬の添付文書と患者向医薬品ガイドの読み方」にあります。

添付文書が挙げている副作用

重大な副作用

添付文書は、副作用の項の前文で、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこととしています。重大な副作用は、肝機能障害と黄疸の2つで、どちらも頻度不明です。AST、ALT、ビリルビンの上昇などを伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあると書かれています。検査値と健診の関係は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」で説明しています。

その他の副作用の表

「その他の副作用」の表は、頻度の区分ごとに、次のように載せています。

1%以上 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)(※)
1%未満 発疹、頭痛、抑うつ気分、乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)、腹部不快感
頻度不明(過敏症) 蕁麻疹、アレルギー反応、瘙痒症、限局性浮腫、血管性浮腫
頻度不明(精神神経系) 浮動性めまい、味覚異常
頻度不明(生殖系) 精巣痛、精巣腫脹
頻度不明(皮膚) 脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症
頻度不明(消化器・その他) 腹痛、下痢、倦怠感、血中CK増加

表の注(※)は、「投与中止後も持続したとの報告がある」です。

「頻度不明」は、頻度が示されていない項目の区分です。頻度不明の項目の多い少ないは、添付文書には示されていません(2026年11月時点)。表だけでは、頻度不明の項目の起こりやすさは比べられません。

副作用の確率はどう書かれているか

表の「1%以上」「1%未満」は区分で、1つ1つの割合は載っていません。具体的な割合は、臨床成績の項にある2つの試験の数字から読み取れます。

国際共同第Ⅱ/Ⅲ相二重盲検比較試験は、20歳から50歳の男性型脱毛症患者917例(日本人200例を含む)を対象に、24週間投与した、プラセボとフィナステリド1mgを比較の対象にした試験です。国内第Ⅲ相試験(長期投与試験)は、同じ年齢の患者120例に、0.5mgを52週間投与した試験です。副作用の発現割合と主な副作用は、次のとおりです。

表は横にスクロールできます。

項目 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(24週間) 国内第Ⅲ相試験(52週間)
副作用の発現割合 17.1%(95/557例) 16.7%(20/120例)
勃起不全 4.3%(24/557例) 10.8%(13/120例)
リビドー減退 3.9%(22/557例) 8.3%(10/120例)
射精障害 主な副作用としては載っていない 4.2%(5/120例)
精液量減少 1.3%(7/557例) 主な副作用としては載っていない

国際共同試験の数字は、承認用量ではない0.02mg群を含む557例の割合です。添付文書は、本剤の承認用量を1日1回0.1mgまたは0.5mgとしています。0.1mgと0.5mgの割合の違いは、添付文書には示されていません(2026年11月時点)。

2つの試験は、投与期間も、用量も、対象の人数も異なります。数字の大小だけで、どちらの試験が正しいと決めることはできません。

使い続けるうえで知っておきたい記載

中止後も続いたとの報告

性機能不全には、投与中止後も持続したとの報告があると添付文書に書かれています(上の注)。報告があるという記載で、起こる割合は書かれていません。やめた後の経過は、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」にまとめています。

気分の変化に関する記載

副作用の表では、抑うつ気分が「1%未満」です。フィナステリドの添付文書にある自殺念慮などの注意書きに当たる記載は、この記事で参照した添付文書と患者向医薬品ガイドには見当たりません(2026年11月時点)。気分の落ち込みが続くときは、記載の有無にかかわらず、処方した医師に伝えてください。フィナステリド側の記載は、記事「フィナステリドの副作用 添付文書に書かれた頻度と、疑ったときの動き方」にあります。

乳房と前立腺に関する記載

添付文書の「その他の注意」には、デュタステリドを投与された前立腺肥大症患者で男性乳癌が報告されているが、関連性は不明とあります。前立腺肥大症患者を対象にした2~4年間の海外臨床試験(4,325例)では、3例の乳癌が報告され、デュタステリドの投与例が2例、プラセボのみの投与例が1例でした。国内臨床試験での報告はないとも書かれています。

前立腺癌については、白人を主体とした50~75歳の男性8,231例(生検で前立腺癌が陰性かつPSA値2.5~10.0ng/mL)を対象にした4年間の国際共同試験(日本人57例を含む)が載っています。Modified Gleason Score 8~10の前立腺癌の発現率は、プラセボ群0.5%、デュタステリド群1.0%で、相対リスクは2.06(95%信頼区間1.13~3.75)と書かれています。対象は上記のとおりで、男性型脱毛症の患者とは書かれていません。

患者向医薬品ガイドが挙げる症状

患者向医薬品ガイドは、添付文書をもとに、重大な副作用の早期発見などに役立てるために作られた資料です。ザガーロカプセルのガイド(2021年8月更新)は、使い始める前に医師か薬剤師に告げる人として、肝臓に障害がある人を挙げています。使用できない人は、過去に成分や他の5α還元酵素阻害薬で過敏症のあった人、女性、小児、肝臓に重度の障害がある人です。

「副作用は?」の欄に載っている重大な副作用は、肝機能障害と黄疸です。主な自覚症状は、次のとおりです。

肝機能障害 疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振
黄疸 白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなる、体がかゆくなる

ガイドは、副作用であれば、いくつかの症状が同じような時期にあらわれることが一般的で、そのような場合はただちに医師または薬剤師に相談するよう求めています。このガイドの「副作用は?」の欄には、性機能に関する副作用や、頻度不明の項目の症状は含まれていません。副作用の全体は、添付文書の表で確かめてください。

ガイドラインの記載

日本皮膚科学会のガイドラインは、男性型脱毛症に対するデュタステリドの内服を、推奨度A(行うよう強く勧める)としています。CQ2の解説は、副作用について、次の3つの数字を挙げています。

表は横にスクロールできます。

試験 リビドー減少 インポテンツ 射精障害
国際臨床試験 3.3% 5.4% 3.3%
韓国の市販後調査(712例、平均観察期間204.7日) 1.3% 1% 0.1%
国内の非ランダム化試験(120例、52週間) 8.3% 11.7% 5.0%

同じ解説は、国内の試験を「比較的高率」としたうえで、投与にあたっては添付文書の記載をよく読み、性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要としています。

国際共同試験では、ガイドラインのインポテンツ5.4%、リビドー減少3.3%と、添付文書の勃起不全4.3%、リビドー減退3.9%で数字が異なります。国内の120例の試験でも、ガイドラインは11.7%と5.0%、添付文書は10.8%と4.2%(インポテンツと勃起不全、射精障害の順)です。違いの理由を説明した記載は見当たりません(2026年11月時点)。数字は、どの資料のものかを確かめて読んでください。

妊活やパートナーがいるとき

添付文書は、女性への投与を禁忌とし、妊婦と授乳婦には投与しないとしています。ラットとウサギで雄胎児の外生殖器の雌性化がみられ、本剤の曝露により血中ジヒドロテストステロンが低下し、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されたと書かれています。本剤は経皮吸収されるため、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れないこと、触れた場合は直ちに石鹸と水で洗うことも求めています。

子どもを望んでいるときは、精液についての記載が関わります。添付文書の「その他の注意」には、18~52歳の健康成人(デュタステリド群27例、プラセボ群23例)を対象にした海外臨床試験があります。0.5mg/日を52週間投与し、24週間追跡した試験です。

  • 投与52週目の総精子数、精液量、精子運動率は、投与前値から平均でそれぞれ23%、26%、18%減少した(プラセボ群の変化で調整)
  • 精子濃度と精子形態への影響は認められなかった
  • 総精子数の平均減少率は、24週間の追跡後も23%のままだった
  • いずれの評価時期でも、精液パラメータの平均値は正常範囲内だった

デュタステリド群の2例では、投与52週目に投与前値から90%を超える精子数の減少が認められ、追跡24週目には軽快したとも書かれています。添付文書は、精液特性への影響が、個々の患者の受胎能に対しどのような臨床的意義をもつかは不明としています。

体内動態の項には、健康成人に0.5mgを反復投与した試験(外国人データ)で、精液中と血清中の薬物濃度比が平均11.5%だったとあります。非臨床試験の項には、アカゲザルの器官形成期にデュタステリドを静脈内投与した試験も載っています。精液を介して女性が曝露される推定最大量の186倍に当たる群で、雌胎児1例に卵巣・卵管の不均衡発達が認められ、本薬投与との関連性は不明と書かれています。これらの記載だけで、パートナーが妊娠した場合の安全性を判断することはできません。妊活の予定は、処方を受ける前に医師に伝えてください。2つの薬の取扱いの違いは、記事「フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる」にあります。

検査と健診で関わること

前立腺とPSA

添付文書は、この薬が血清前立腺特異抗原(PSA)に影響を与えるとして、前立腺癌等の検査で次の点に注意することを求めています。

  • 前立腺肥大症患者に0.5mg/日を投与した場合、前立腺癌があっても、投与6か月後にPSA値を約50%減少させる
  • 6か月以上投与している患者のPSA値を評価するときは、測定値を2倍した値を目安に基準値(通常4.0ng/mL)と比べる
  • 男性型脱毛症の患者でも、臨床試験の結果から、PSA値が減少すると推測される
  • 投与前のPSA値が基準値未満でも、前立腺癌の診断を除外しないように注意する
  • PSA値は、投与中止後6か月以内に投与開始前の値に戻る
  • 投与中にPSA値が持続的に増加するときは、前立腺癌の発現や服薬の不遵守も考えて評価する
  • 投与6か月以降のPSA値を新たなベースラインとし、その後は適宜測定して、ベースラインからの変動を評価する
  • 投与中はfree/total PSA比が一定に保たれるため、前立腺癌のスクリーニングに% free PSAを使う場合は、測定値の調整は不要

患者向医薬品ガイドは、PSAの検査を受けるときに、この薬を飲んでいることを検査を行う医師に伝えるよう求めています。数字と伝え方は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」にもあります。

献血

大阪府赤十字血液センターの案内は、デュタステリドを含むAGA治療薬について、服薬中止後6か月間は献血できないとしています。同じページは、AGA治療薬のうちミノキシジルの錠剤と外用薬は当日使用可としています。献血できるかどうかは、当日の健診医師が最終的に判断するとも書かれています。献血の問診で聞かれる内容と、フィナステリドとの期間の違いは、記事「AGA治療薬を使っているときの献血 問診で聞かれる薬と期間」にあります。

参照した資料に記載が見当たらないこと

「初期脱毛」という語は、この記事で参照した添付文書、患者向医薬品ガイド、ガイドラインの上記の箇所には含まれていません(2026年11月時点)。副作用の表には「脱毛症(主に体毛脱落)」が頻度不明で載っていますが、頭髪の抜け毛が増える時期についての説明は添付文書にありません。副作用が何週目や何か月目から出るのかを示した記載も、含まれていません。

同様に、「妊活」にあたる、子どもを望む男性への服用の可否を述べた記載も、参照した添付文書、患者向医薬品ガイド、ガイドラインには見当たりません。精液についての試験結果は、上の節にあるとおりです。抜け毛や体調の変化は、始めた日付と一緒に記録して、医師に伝えてください。

フィナステリドとの違い

デュタステリドの添付文書は、副作用の頻度の区切り方や載っている試験が、フィナステリドとは異なります。フィナステリドの性機能に関する副作用は、国内の48週間の試験の数字と、表の区分で書かれています。2つの添付文書の並べ方は、記事「フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる」にあります。数字の大小だけで、どちらかを選ばないでください。

副作用かもしれないと思ったとき

以下の1から3は、添付文書と患者向医薬品ガイドの記載を踏まえた、このサイトからの提案です。

  1. 症状が出た日、薬を飲み始めた日、ほかに使っている薬を書き留めてください
  2. 処方した医師か、薬局の薬剤師に連絡してください。続けるかどうかは、自分で判断せずに相談してください
  3. 重い症状や、命に関わると感じる症状があるときは、近くの医療機関や救急の窓口を利用してください

患者向医薬品ガイドは、体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり量を加減したりすると病気が悪化することがあるとしています。症状が出たときに続けるかどうかは、処方した医師か薬剤師に相談して決めてください。

PMDAは、患者本人や家族が副作用と疑われる症状を報告できる「患者副作用報告」を受け付けています。同じ案内は、現在副作用が疑われる症状がある人は医療機関に相談するよう求め、報告に対する助言などの連絡は行っていないとしています。仕組みは、記事「副作用かもしれないと思ったときの相談先と報告の仕組み」にあります。

医薬品副作用被害救済制度は、PMDAによると、医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害に、医療費等を給付する公的な制度です。対象になる範囲と、個人輸入した薬などが対象外になる点は、記事「医薬品副作用被害救済制度の基礎知識」で説明しています。ほかの相談窓口との使い分けは、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」で確かめてください。

使い始める前に医師に聞くこと

添付文書の併用注意には、リトナビルなどCYP3A4を阻害する作用のある薬が挙がっていて、併用すると本剤の血中濃度が上昇する可能性があるとされています。ほかに使っている薬は、診察のときにすべて伝えてください。

以下は、添付文書、患者向医薬品ガイド、ガイドラインの記載を踏まえた、このサイトからの提案です。

  • 肝臓の病気や、ほかの5α還元酵素阻害薬で過敏症があったことを、診察のときに伝えた
  • 子どもを望む時期と、同居する家族や妊娠中のパートナーの有無を伝えた
  • ほかに使っている薬と、PSAの検査や健診、献血の予定を伝えた
  • 性機能に関する副作用と、中止後も続いたとの報告があることの説明を受けた
  • 気になる症状が出たときの連絡先と、診察を受ける頻度を確かめた
  • 効果を評価するまでの期間(添付文書は通常6か月としています)と、続けるかどうかを決める時期を確かめた

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参考にした一次情報

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