頻度の区分と、中止後も続いたとの報告

フィナステリドの添付文書(プロペシア錠、2023年8月改訂・第4版)は、重大な副作用に肝機能障害(頻度不明)を挙げています。その他の副作用では、リビドー減退が「1~5%未満」、勃起機能不全、射精障害、精液量減少が「1%未満」で、抑うつ症状や男性不妊症・精液の質低下などは「頻度不明」です。添付文書によると、国内の48週間の試験で、性機能に関する副作用は0.2mg群1.5%、1mg群2.9%、プラセボ群2.2%でした。リビドー減退、勃起機能不全、射精障害には、市販後に投与中止後も持続したとの報告があると注記されています。気になる症状があるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。

参照する資料

ここで取り上げるのは、フィナステリドの「プロペシア錠」の添付文書と患者向医薬品ガイド、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」です。以下では、それぞれ「添付文書」「患者向医薬品ガイド」「ガイドライン」と書きます。ガイドラインは平成29年(2017年)、添付文書は2023年8月、患者向医薬品ガイドは2025年12月の版です。版が異なるので、数字は出典と一緒に読んでください。

同じ成分のほかの製品の添付文書は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトで確かめられます。読み方の基本は、記事「薬の添付文書と患者向医薬品ガイドの読み方」にあります。

添付文書が挙げている副作用

重大な副作用

添付文書は、副作用の項の前文で、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこととしています。重大な副作用は、肝機能障害(頻度不明)の1つです。検査値と健診の関係は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」で説明しています。

その他の副作用の表

「その他の副作用」の表は、頻度の区分ごとに、次のように載せています。

1~5%未満 リビドー減退(※1)
1%未満 勃起機能不全(※1)、射精障害(※1)、精液量減少
頻度不明(過敏症) そう痒症、じん麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む)
頻度不明(生殖器) 睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)(※2)
頻度不明(肝臓) AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇
頻度不明(その他) 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい

表の注は、※1が「市販後において、投与中止後も持続したとの報告がある」、※2が「本剤の投与中止後に、精液の質が正常化又は改善されたとの報告がある」です。

「頻度不明」は、頻度が示されていない項目の区分です。多いのか少ないのかは、この記事で参照した添付文書には書かれていません。表だけでは、頻度不明の項目の起こりやすさは比べられません。

数字はどの試験のものか

参照した添付文書の表には、頻度の出どころを示す注記は含まれていません。注は上の※1と※2だけです。国内の試験の副作用の数字は、臨床成績の項に載っています。

国内第Ⅱ/Ⅲ相二重盲検比較試験は、24歳から50歳の男性型脱毛症患者414例を対象にした、48週間のプラセボ対照の試験です。副作用の発現割合(臨床検査値異常変動を含む)と、性機能に関する副作用の割合は次のとおりです。

表は横にスクロールできます。

群 副作用の発現割合 性機能に関する副作用
0.2mg投与群 1.5%(2/137例) 1.5%(2/137例)
1mg投与群 6.5%(9/139例) 2.9%(4/139例)
プラセボ群 2.2%(3/138例) 2.2%(3/138例)

同じ項には、0.2mg群と1mg群を合わせた276例で、認められた主な症状がリビドー減退1.1%(3/276例)、勃起機能不全0.7%(2/276例)だったとも書かれています。

群ごとの人数は130例台で、割合の差が小さいときに、薬によるものかどうかは、この数字だけでは判断できません。表の区分と、これらの数字が同じ試験に基づくのかどうかは、添付文書に書かれていません。

使い続けるうえで知っておきたい記載

中止後も続いたとの報告

リビドー減退、勃起機能不全、射精障害には、市販後に投与中止後も持続したとの報告があると添付文書に書かれています(上の※1)。報告があるという記載で、起こる割合は書かれていません。やめた後の経過は、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」にまとめています。

気分の変化に関する記載

添付文書は、「重要な基本的注意」で、本剤との因果関係は明らかではないが、自殺念慮、自殺企図、自殺既遂が報告されているとしています。自殺念慮や自殺企図があらわれた場合には、服用を中止して速やかに医師等に連絡するよう患者に指導することを求めています。うつ病、うつ状態やその既往歴、自殺念慮や自殺企図の既往歴がある患者の項にも、因果関係は明らかではないが同じ報告があると載せています。副作用の表では、抑うつ症状が頻度不明です。

乳房と前立腺に関する記載

添付文書の「その他の注意」には、市販後に男性乳癌が報告されているが、長期投与との因果関係は不明とあります。海外の試験の結果も載っています。18,882例の健康男性に、承認用量の5~25倍にあたる5mgを7年間投与した試験では、高悪性度前立腺癌の発現率がプラセボ群1.1%、5mg群1.8%でした。相対リスクは1.70(95%信頼区間1.23~2.34)と書かれています。承認用量とは異なる、海外の試験の結果です。

患者向医薬品ガイドが挙げる症状

患者向医薬品ガイドは、添付文書をもとに、重大な副作用の早期発見などに役立てるために作られた資料です。プロペシア錠のガイド(2025年12月作成)は、使い始める前に医師か薬剤師に告げる人として、次を挙げています。

  • うつ病、うつ状態の人、または過去にうつ病、うつ状態や、自殺念慮、自殺企図のあった人
  • 肝臓に障害がある人

「副作用は?」の欄に載っている重大な副作用は、肝機能障害だけです。主な自覚症状は、疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振です。ガイドは、副作用であれば、いくつかの症状が同じような時期にあらわれることが一般的で、そのような場合はただちに医師または薬剤師に相談するよう求めています。

使用中に気をつけることとしては、薬との関連性は明らかではないとしたうえで、死んでしまいたいと感じる、自殺行動をおこす、自殺行動により死に至ってしまうなどの報告があると書いています。死んでしまいたいと感じた場合や自殺行動をおこした場合は、この薬の使用を中止し、医師に相談するよう求めています。

このガイドの「副作用は?」の欄には、性機能に関する副作用や、頻度不明の項目の症状は含まれていません。副作用の全体は、添付文書の表で確かめてください。

ガイドラインの記載

日本皮膚科学会のガイドラインは、男性型脱毛症に対するフィナステリドの内服を、推奨度A(行うよう強く勧める)としています。CQ1の解説は、副作用について、次のように書いています。

12件のランダム化比較試験を解析した、3,927名の男性被験者を対象とするシステマティック・レビュー(観察期間12カ月から24カ月以上)を紹介しています。この中で、性機能障害の相対危険度は1.39(95%信頼区間0.99~1.95)で、フィナステリド投与群がプラセボ群より上昇する傾向があるとしています。

日本人男性の試験として、414名の48週間のランダム化比較試験に続く、374名の2年間の非ランダム化比較試験も挙げています。0.2mg/日から1mg/日、プラセボから1mg/日に移行した患者に、性機能に関する副作用の出現はなかったと書かれています。プラセボから1mgに移行した患者に1例ずつ出た胃潰瘍と大腸ポリープも、因果関係は不明としています。

重要な副作用としては、頻度は明らかではないが、まれに肝機能障害があらわれることがあるとしています。

この2つの結果は、対象も、期間も、試験の種類も異なります。前者は12件の試験の解析、後者は日本人男性の試験の追跡です。片方だけを取り出して、起こる、起こらないと決めることはできません。

妊活やパートナーがいるとき

添付文書は、妊婦又は妊娠している可能性のある女性と授乳中の女性への投与を禁忌とし、妊婦に投与すると男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあるとしています。錠剤を分割・粉砕しないこと、粉砕・破損した場合は妊婦などが取り扱わないことも書いています。同居する家族がいる場合の扱いは、記事「フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる」にあります。

子どもを望んでいるときは、副作用の表の「男性不妊症・精液の質低下」(頻度不明)が関わります。添付文書は、投与中止後に精液の質が正常化又は改善されたとの報告があると注記しています(※2)。体内動態の項には、男性型脱毛症患者に1mgを1日1回6週間投与した試験(外国人データ)で、精液中への移行量が投与量の0.00076%以下と極めて微量だったとあります。この数字だけで、パートナーが妊娠した場合の安全性を判断することはできません。妊活の予定は、処方を受ける前に医師に伝えてください。精液の質の記載は、記事「AGA治療薬の服用をやめるとき 効果は戻るのか、検査や献血への影響はいつまでか」にもあります。

検査と健診で関わること

添付文書は、投与中に前立腺癌の診断の目的で血清PSA濃度を測るときは、2倍した値を目安として評価することとしています。患者向医薬品ガイドは、PSAの検査を受けるときに、この薬を飲んでいることを検査を行う医師に伝えるよう求めています。数字と伝え方は、記事「AGA治療薬を使っているときの健康診断 PSAと肝機能の値」にあります。

参照した資料に記載が見当たらないこと

「初期脱毛」という語は、この記事で参照した添付文書、患者向医薬品ガイド、ガイドラインの上記の箇所には含まれていません(2026年11月時点)。副作用が何週目や何か月目から出るのかを示した記載も、含まれていません。国内の48週間の試験の数字は試験全体の割合で、時期ごとの内訳は載っていません。抜け毛や体調の変化は、始めた日付と一緒に記録して、医師に伝えてください。

デュタステリドとの違い

デュタステリドの添付文書は、副作用の頻度の区切り方や載っている試験が、フィナステリドとは異なります(比較は下の記事にあります)。ガイドラインのデュタステリドの解説は、性機能に関する副作用の頻度を試験ごとに挙げ、国内の非ランダム化試験で比較的高率だったとしています。2つの添付文書の並べ方は、記事「フィナステリドとデュタステリドの違いを添付文書で比べる」にあります。数字の大小だけで、どちらかを選ばないでください。

副作用かもしれないと思ったとき

以下の1から3は、添付文書と患者向医薬品ガイドの記載を踏まえた、このサイトからの提案です。

  1. 症状が出た日、薬を飲み始めた日、ほかに使っている薬を書き留めてください
  2. 処方した医師か、薬局の薬剤師に連絡してください。続けるかどうかは、自分で判断せずに相談してください
  3. 重い症状や、命に関わると感じる症状があるときは、近くの医療機関や救急の窓口を利用してください

患者向医薬品ガイドは、体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり量を加減したりすると病気が悪化することがあるとしています。一方で、死んでしまいたいと感じたときは、使用を中止して医師に相談するよう求めています。

PMDAは、患者本人や家族が副作用と疑われる症状を報告できる「患者副作用報告」を受け付けています。同じ案内は、現在副作用が疑われる症状がある人は医療機関に相談するよう求め、報告に対する助言などの連絡は行っていないとしています。仕組みは、記事「副作用かもしれないと思ったときの相談先と報告の仕組み」にあります。

医薬品副作用被害救済制度は、PMDAによると、医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害に、医療費等を給付する公的な制度です。対象になる範囲と、個人輸入した薬などが対象外になる点は、記事「医薬品副作用被害救済制度の基礎知識」で説明しています。ほかの相談窓口との使い分けは、記事「治療や契約で困ったときに相談できる公的な窓口」で確かめてください。

使い始める前に医師に聞くこと

以下は、添付文書、患者向医薬品ガイド、ガイドラインの記載を踏まえた、このサイトからの提案です。

  • うつ病やうつ状態、自殺念慮や自殺企図の既往、肝臓の病気を、診察のときに伝えた
  • 子どもを望む時期と、同居する家族や妊娠中のパートナーの有無を伝えた
  • ほかに使っている薬と、PSAの検査や健診、献血の予定を伝えた
  • 性機能に関する副作用と、中止後も続いたとの報告があることの説明を受けた
  • 気になる症状が出たときの連絡先と、診察を受ける頻度を確かめた
  • 効果を確認できるまでの期間(添付文書は通常6か月としています)と、続けるかどうかを決める時期を確かめた

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参考にした一次情報

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