診療科名は法令で決まり、「AGAクリニック」は名称にあたる

医療機関が広告できる診療科名は、医療法施行令第3条の2で決まっていて、厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」がその範囲と例を示しています。皮膚科はその1つで、美容皮膚科はガイドラインが組み合わせの例として挙げています。「AGAクリニック」のような言葉は、この記事で参照した資料の診療科名には含まれていません。日本皮膚科学会の診療ガイドライン(2017年版)は、男性型脱毛症の診断では円形脱毛症の亜型を、女性型脱毛症の診断では貧血や全身性疾患に伴う脱毛などを除外することが大切としています。受診先は、掲げている診療科名と、他の原因を含めて診察するかどうかの両方で確かめられます。

「何科」には2つの見方がある

「AGAは何科か」という疑問には、2つの見方で答えられます。1つは、医療機関が診療科名として掲げられる名称の決まりです。もう1つは、その医療機関が脱毛の診察をどのように行うかです。

前者は法令で決まっていて、公的な資料で確かめられます。後者は医療機関ごとに違うので、予約の前に自分で確かめるか、質問することになります。この記事では、皮膚科のクリニック、AGAの治療を主に扱うクリニック、オンライン診療のクリニックを、同じ項目で比べられるようにします。どれが合うかは、読者の状況によって変わります。

診療科名は法令で決まっている

医療法施行令の第3条の2は、「広告をすることができる診療科名」を定めています。内科と外科のほか、皮膚科、泌尿器科、小児科、精神科などが挙げられています。内科または外科は、「美容」「形成」などの事項と、省令の定めにより組み合わせられます。ただし、内科に「形成」、外科に「心療」を付ける組み合わせなどは、ガイドラインが不合理な組み合わせとしています。皮膚科も、臓器名との一部の組み合わせを除いて組み合わせられます。

厚生労働省の「医療広告等ガイドライン」(令和8年(2026年)3月30日最終改正)は、政令に定められた診療科名と、診療に従事する医師が厚生労働大臣の許可を受けたものを、広告できる診療科名としています。同じガイドラインは、通常考えられる診療科名の例を挙げています。AGAや薄毛の受診先を探すときに目に入りやすい名称は、次のとおりです。

名称 法令やガイドラインでの扱い
皮膚科、内科 医療法施行令第3条の2に定められた診療科名
美容皮膚科、形成外科、美容外科 医療法施行令第3条の2の組み合わせにあたる名称で、ガイドラインが、通常考えられる診療科名として例示
AGA科、薄毛科 この記事で参照した政令とガイドラインの診療科名には含まれていない

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」は、この記事では「診療ガイドライン」と書きます。免責事項で、「臨床皮膚科医の視点に立って」現段階の医療水準を記載したものと述べています。同じ免責事項は、このガイドラインが医師の裁量権を規制し、治療方針を限定するものではないともしています。日本皮膚科学会が治療の推奨度をまとめていることは、受診先を考えるときの手がかりの1つです。ただし、診療ガイドラインにも、法令にも、AGAや薄毛を特定の診療科でしか診てはならないという趣旨の記載は、この記事で参照した範囲では含まれていません。

診療科名の数にも、ガイドラインに目安があります。医師1人に対して、主たる診療科名を原則2つ以内とし、主たる診療科名を大きく表示するなど、他の診療科名と区別して表記することが望ましいとしています。ガイドラインは、診療科名の数を禁じるのではなく、主たる診療科名を区別して示すことが望ましいとしています。区別が分かりにくいときは、主に診ている分野を問い合わせてください。

「AGAクリニック」は診療科名ではなく名称

ガイドラインは、病院や診療所の名称について、正式な名称のほかに、当該医療機関であることが認識できる略称や英語名も広告できるとしています。「AGAクリニック」のような言葉は、診療科名ではなく、医療機関の名称やキャッチフレーズとして目に入ります。

ガイドラインは、AGAの治療を、診療科名ではなく治療の内容に関する事項として広告できる例を挙げています。例は「AGA治療薬を取り扱っております」です。薬が特定されないので、自由診療である旨と標準的な費用を併せて示してあれば、医薬品医療機器等法の承認を得た医薬品による治療の内容として広告できるという説明です。サイトにこの種の表示があれば、診療科名の欄とは別に、治療の内容と費用の欄を見てください。

「専門外来」という表記も、ガイドラインに説明があります。広告できる診療科名と誤認させる事項で、広告できる事項ではないとしています。ただし、保険診療などの広告できる範囲で、特定の治療や検査を外来で行う旨を示すことまでは、一律に禁じていません。「専門外来」という表記は、診療科名ではありません。

診療科目は医療情報ネットで確かめる

掲げている診療科名は、サイトの表記だけでなく、公的な検索でも確かめられます。厚生労働省の「医療機能情報提供制度」は、住民や患者が医療機関を適切に選べるように、平成18年(2006年)の第五次医療法改正で導入されました。病院などは、医療機能の情報を都道府県知事へ報告します。同省の説明では、「医療情報ネット(ナビイ)」は、診療日や診療科目などの一般的な情報と、対応可能な疾患・治療内容、提供しているサービスなどから、全国の医療機関を検索できるシステムです。

2026年11月時点で、公開の検索ページの診療科目の選択肢には、皮膚科、美容皮膚科、形成外科、美容外科、内科などが並んでいます。「他の項目」の「疾患・治療内容」には、「その他の疾患等への対応」があります。その中の「皮膚・形成外科領域」には、「皮膚・形成外科領域の一次診療」「皮膚生検」「光線療法」「アトピー性皮膚炎の治療」などの項目があります。2026年11月4日に確かめた範囲では、脱毛症や薄毛を名指しした項目は、この領域の一覧に見当たりません。

そのため、脱毛の診察をしているかどうかは、医療機関のサイトや問い合わせで確かめてください。検索の手順と、見当たらないときの考え方は、記事「医師等資格確認検索と医療情報ネットの使い方 医師の免許と医療機関を確かめる」にあります。

他の原因を診る診察かどうかを確かめる

診療科名とあわせて確かめたいのが、診察の中身です。診療ガイドラインは、男性型脱毛症の診断を、問診で家族歴や脱毛の経過などを聴き、視診で額の生え際の後退と、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認するものとしています。拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けになるとしています。

そのうえで、診療ガイドラインは、男性型脱毛症の診断は比較的容易であるが、除外することが大切なものがあるとしています。男性型脱毛症の診断では、ゆっくりと頭髪が抜け、頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型です。女性型脱毛症については、次のものを挙げています。

  • 慢性休止期脱毛
  • 膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
  • 貧血、急激なダイエット、その他の消耗性疾患などに伴う脱毛
  • 治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛

これは診療ガイドラインが診断について述べた部分で、どの診療科の医療機関が行うかを決める記載ではありません。読者にできるのは、受診先がこの点を診察に含めているかを、予約の前に質問することです。たとえば、次のように聞けます。

  • 脱毛の原因が、AGA以外にもあるかどうかを、診察で確かめますか
  • 血液検査など、他の原因を調べる検査を行いますか。行う場合の条件と費用はどうなりますか
  • AGA以外の原因が疑われたときは、院内で診ますか。他の医療機関を紹介しますか

診察で聞かれることと、伝えておくことは、記事「AGAの初回カウンセリングで聞くこと 誰が何を説明し、何を伝えるか」にまとめています。

女性の場合

診療ガイドラインでは、女性の薄毛は「女性型脱毛症」として男性型と分けて扱われ、上に挙げた除外の対象も女性型脱毛症について書かれています。診断の考え方、治療の推奨度、内服薬の扱いは、記事「女性の薄毛で受診するときの確認点 女性型脱毛症の診断と治療の推奨度」で説明しています。

受診先を探すときは、男性と同じ手順が使えます。診療科目を医療情報ネットで確かめ、サイトで脱毛の診察を行っているかを確かめ、除外の診察についての質問を送ります。妊娠や授乳の予定がある場合は、予約の前に医療機関へ伝えてください。

3つの入口を同じ項目で比べる

受診先は、皮膚科のクリニック、AGAの治療を主に扱うクリニック、オンライン診療のクリニックに分けて考えると、探しやすくなります。この3つは、どれも選択肢になります。診療科名だけでは、診察の中身や費用の扱いは決まらないので、次の項目で確かめてください。

確かめる項目 確かめ方
診療科名 サイトの表記と、医療情報ネットの診療科目が一致するか
脱毛の診察 AGAや薄毛を診ていると、サイトに書かれているか。書かれていなければ問い合わせる
他の原因の確認 問診、視診、検査の範囲と、AGA以外が疑われたときの対応を質問する
保険診療か自由診療か 受けたい診療が、どちらの扱いになるのかを質問する
費用 診察料、検査、薬の内訳と、標準的な費用がサイトに示されているか
診察の方法 来院かオンラインか。初診からオンラインで受けられる条件を満たすか

保険診療と自由診療は、診療科名とは別の問いです。どちらで受けるのかによって、窓口で払う費用の仕組みが変わります。違いは、記事「自由診療と保険診療の違いと、受診前に確認したいこと」で説明しています。AGAの治療が、保険診療と自由診療のどちらの扱いになるかは、この記事では扱いません。

オンライン診療を選ぶときは、診察で医師が得られる情報が、来院とどう違うかも判断の材料になります。比べる項目は、記事「AGA治療はオンライン診療と来院のどちらで受けるか 違いを比べる項目」にあります。初診からオンラインで受けられる条件は、記事「初診からオンライン診療を受けるときのルール」で説明しています。

最初にどこへ行くかを決める

以下は、法令、ガイドライン、診療ガイドラインを踏まえた、このサイトからの提案です。迷うときは、次の順に進めてください。

  1. 脱毛に気づいた時期、抜け方の経過、急な体重の変化、服用中の薬、持病を書き出す
  2. 医療情報ネットで、通える範囲かオンラインの候補の診療科目を確かめる
  3. 候補のサイトで、診療科名、脱毛の診察、治療の内容、標準的な費用を確かめる
  4. 上の質問を、予約の前に問い合わせる。答えの分かりやすさも判断に含める
  5. 1か所で決めきれないときは、診察だけを受けられるかを確かめたうえで、別の候補にも質問する

診察だけを受けて、治療は始めないという選択もあります。診察と治療の申込みが分かれているかどうかは、予約の前に確かめられます。予約から診療後までの流れは、基礎ガイド「予約から診療後までの流れ」にあります。

  • 候補の診療科名を、サイトと医療情報ネットの両方で確かめた
  • 「AGAクリニック」などの名称と、診療科名を分けて読んだ
  • 脱毛の診察を行っていると、サイトか問い合わせで確かめた
  • 他の原因を調べる診察や検査があるか、質問した
  • 保険診療か自由診療か、標準的な費用はいくらかを確かめた
  • 経過、服用中の薬、持病を、書き出して持っていく

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参考にした一次情報

内容を確認するときは、各機関が公開する最新版もあわせてご覧ください。